お兄ちゃんがアイドルとか知りません!!



なんでこんなことになってるんだろう。


ついに華のJKとなった私・伊乃莉は、なぜか東京駅の激混みに巻き込まれていた。


「伊乃莉、迷子になったら危ねぇぞ」


ぎゅ、っと手を握られて、その温もりに顔がぽっと赤くなる。

私、お兄ちゃん相手にドキドキしてる…!?



…そう、なんで私が東京駅なんかに来ているかと言うと。



なんやかんやあって、あの後私は結局、お兄ちゃんについて行くことになりまして。




お兄ちゃんが住んでいる部屋はどうやら事務所が借りている最強セキュリティのマンションらしい。



私はお兄ちゃんと同じ部屋に住むことになった(流石にひとり部屋はあるけど)。




受験も無事終えて、東京の学校にも合格して。



晴れやかな気持ちでこの日を迎えているのに、あいにく曇り空。




新幹線、電車、タクシー、また電車。



いくつも乗り継いで、お兄ちゃんの住んでるマンションにたどり着いた。


めちゃくちゃ高層で、しかも入り口からホテル感がすごい!!


エレベーターはカードキーがないと入れないし、コンシェルジュさんもいる。


「お疲れ様です」とコンシェルジュさんに挨拶をするお兄ちゃんの後を蟻みたいについて行くと、お兄ちゃんの部屋まで着いた。


『1206』…部屋番号、お兄ちゃんの誕生日!



カードキーをかざすとピピっと音がして、ガチャリと大袈裟な音をたててドアが解錠される。


はじめて入るお兄ちゃんの部屋にドキドキを隠せないでいると、「早く入れ」と急かされた。


「あ、うん、お邪魔します…」

「ばーか。今日から伊乃莉は「ただいま」だよ」



…そっか、ここが、私のお家。




ずっと住んでいた、私にとっての“実家”を離れたのは不安だけど、隣にお兄ちゃんがいれば…きっと大丈夫。



伊乃莉の部屋だ、と案内されてドアを開けると、段ボールの山。



「引越し業者さんがもう運んでくれたよ。
棚とかタンスとか、あとベッドはこっちで買っちゃったけど…大丈夫だった?」




白い木目調の床。

ベッドも本棚もタンスも、全部白基調でまとめられていておしゃれ。


カーペットは差し色のイエロー…。





「…ゃ、いい」

「へ?」



「めっっっちゃいい!!!」



やっぱりお兄ちゃん、センス最高!



「今日からここが、私の部屋…」


視界の端にある積まれた段ボール箱は、一旦無視。




「すごい、夢みたい…」



お兄ちゃんの夢が変わって、私の生活も変わって。



でも、もう不安は無くなった。



いつだって隣にお兄ちゃんがいる幸せ。



「…お兄ちゃん、これからよろしくね!」



思わず上がった口角を見て、お兄ちゃんは少し驚いた様子だったけれど、すぐに「よろしく」と笑ってくれた。