オンラインゲーム『ラピスラズリ』


初めてゲームの世界に来た時、タクマの強さは羨望の的だった。
この世界に存在しない色……ブルードラゴンと同色の紺碧。
それがタクマの強さを覆すの?
タクマはプログラムを不正に改造して、『この世界に平和』が訪れる事を望んだとは思えない。
不正な強さを得たのなら、タクマは死を覚悟しない。ましてヒロインは不要。

ブルードラゴンに圧倒され、追い詰められた状態のタクマ。
敵は長い尾を持ち上げ、タクマに目掛けて振り下ろした。
画面に点滅する文字『Shift』。
前回と同じキーを咄嗟に押し、素早く反応できた自分に驚く。
心構えも無く、自分の頭の中を様々な思考が行き交い、集中力を欠いた。
不注意な自分のミスを恐れ、気合が入る。
「プロスヒェルテン!」
前回と同様、視界を奪うような光と魔方陣。
あの降り注ぐ刃を、ことごとく打ち砕いた防壁がタクマを覆った。
ブルードラゴンの尾は、威力を失ったように防壁で止まる。
巨体のバランスを崩したのか、ブルードラゴンの攻撃も停止。
タクマは剣を構えて詠唱を唱え、足元の魔方陣に剣の切っ先を向けた。
周辺を闇に染め、魔方陣の特別な光が円柱状に上空へ向かって一気に駆け上る。
空には雨雲が広がり、薄暗い画面に寒気を感じた。
魔方陣は白煙のような光を放出し、タクマの周りを渦のように回転しながら包む。
雷鳴が響いて閃光が走り、タクマは剣を掲げて落雷を受け止めた。
ブルードラゴンは奇声を発し、戦闘態勢に入る。
タクマの剣は雷を帯びて、電光石火を繰り返していた。
襲い掛かる巨体に、タクマは剣を両手で構えて攻撃。
剣は、打撃の為に伸ばされたブルードラゴンの腕を貫き、腹部に突き刺さる。
その切り傷の所から、砂のような黒い霧状の物が噴出。その量は、血飛沫を連想させた。
ダメージの大きさを物語るように、巨体は縮小する。
ブルードラゴンは受けた傷に、苦痛の機械音での奇声を上げ、揺れ続けた。
「お前が何故、この攻撃を……まさか、そんな……」
明らかな別の存在の声。
「そうだ。俺は、お前が取り込んだ勇者を解放した!この装備の紺碧が、その証拠だ。唯一ブルードラゴンを倒せる勇者を、この世界から葬り、消去できたと思っていたのか?」
データの改ざん。タクマの真意。
そして、アズライトの正体…………