オンラインゲーム『ラピスラズリ』


私のタンバリンを構成する元になった情報は、タクマの頭を守っていた兜。
装備の一部は、タンバリンの胴の部分を木枠色から紺碧に換えた。
装備を与えられた私は、静止や消滅から回復したタクマに近づく。
「俺のヒロイン、勝利の女神よ。ありがとう、これからも共に。」
私はタクマの差し伸べる手を、躊躇なく受け入れた。
闇の中、二人は抱擁を交わす。
まるで、ヒーローとヒロインの感動的な再会のシーン。
それなのに、どこか傍観してしまう。

確かに、PCの画面を見ているだけの私。
訳も分からず、押すキーは意味を成さないだろう。
きっと消えかかったタクマが、どれほどの危機だったのか曖昧だからかもしれない。
データの修復が可か不可か。
チャットの時と同じように勝手な干渉なら……難攻不落の城を設定したゲームを、攻略してしまう勇者は歓迎されないだろう。
それでも望む。私は、彼のヒロインである以上に、この世界を楽しみたい。
ハッピーエンドな展開を準備された存在、魅力的な音のある世界。
囚われる。虜になって、抜け出せない感覚が心に浸透する。

ヒロインはヒーローの起死回生に成功し、歓喜の涙が頬を伝う。
零れて輝く涙は、足元の闇に落ちた。
水滴が闇に入って、跳ねかえり、闇を包んだ小さな王冠が生じる。
そこから揺れる闇が光を伴い、波紋が画面に浸透していく。
幾重にも輪のように広がる光を含んだ波の形の模様。
闇が生じた時とは逆転の信号を送るようだ。
私(アバター)は手を掲げ、手首を振って曲に合わせてタンバリンを奏でる。
紺碧のタンバリンは、艶が光を増幅し、シンバルの高音が更に加わったような強い響き。
眩い光が画面を覆う。
私は目を閉じ、感情が高揚するのを味わう。
甘い、酔い痴れる様な気分。
癖になるような、急かすようで味わいたいような複雑な昂り……

それは、麻痺を引き起こす…………