オンラインゲーム『ラピスラズリ』


バイオリンとは違う高音のシンバル音。
音符記号なのか◇(ひし形)が、バネのようにアバターの足元を補佐した。
勢いよくジャンプし、軽やかに……文字と同様ドアをすり抜ける。
開くと思っていたから、アバターが激突するのかと焦った。
不思議な世界。さっきとは違う空間なのだろう。
私(アバター)は、抜けたドアの前。
相手の見えないチャットサイト。アバター2人が並んで会話している……
ん?会話の内容は、若い男女だとイメージした。しかし実際には、いやアバターだから?
私(カコ)の前には、中年太りのオジサンと小学生の男の子。
おやぁ?これは、一体、どうした事でしょう。
確かに、犯罪の匂いがしますが……これは、アバター?
とてもリアルな容姿をアバターにして、会いたいと告げ、受け入れるような二人の会話とは似つかない場面に遭遇した。
どう反応したらよいのだろうか?
文字が書き込まれたのか、男性の濁声でオジサンアバターの口や動作が連動した。
「私たち二人の会話に、あなた……誰なのよ!」
さっきまでの女性の口調は、この……はぁ?
「私は、サイバー・パトローラー。カコ。」
ドヤ顔で、ポーズを決めたセリフ。
音声で聞こえるのは、私の声に近いが、相手にも聞こえているのだろうか?
それとも、二人の書き込みに割り込んだ文字の表示だろうか。
それにサイバー・パトローラーって、何でしょう?

PCの前、傍観するしかない私は自分のアバターを見守る。
「こ、声が、聞こえる……お姉さん、男の人なの?」
小学生の男の子の声で、戸惑いの口調。
男の子のアバターの画像が揺れ、霞むようにして消えた。
ログアウトしたのかな。
少し安心したけど、相手の見えないチャットで、あんな画像の相手を見る事ほど恐ろしいものは無い。
画像が切り替わり、対峙するアバターが戦闘モード。
「何だ、この空間。お前か、邪魔をしたのは。獲物を逃したじゃないか、お前の所為だ!」
私のアバターに、怒りの表情で喰いかかる。
PCの前だというのに、画像が怖くて、身が固まって動けない。
思わず目を閉じる。
タンバリンのシンバル音が響き、目を開けると、カコは身軽に回転をして距離を広げた。
まるで物語の主人公。
揺らしていたタンバリンを上方に、左手を添えるように移動させた。
片面に張った皮を指で打ち、金属円板を鳴らす。
追い迫るオジサンアバターは、音符記号に縛られ、身動きが封じられた。
アバターカコは、更に距離を広げ、タンバリンを振ってシンバルを響かせる。
画像の上部から、黒い影が生じ、押しつぶすように出現した。巨大化した雪だるまのヌイグルミ。
バイオリンの音が曲を奏で、まるでゲームの戦闘終了を告げる様だ。
オジサンアバターは闇に呑まれ、雪だるまのヌイグルミは縮小していく。
半分ぐらいの大きさになると、画像が歪んで形が変化し始めた。
光を伴いながら、ゆっくり回転し……現れたのは、同年代の男の子。
タクマのアバター…………