オンラインゲーム『ラピスラズリ』


画面は、扉が開く映像を映し、光が螺旋を刻む闇から光へと抜ける。
私(アバター)は画面の中央に立ち、文字が浮かんだ空白のような位置に居る様だ。
会話文が、真上や上方の左右から現れて、自分の周りを通り過ぎて地面に吸い込まれるように消えた。
ここは……状況が把握できず、文字を読んでいく。電話?メールの内容?

「カコ、ここはチャットサイト。文字の具現化した空間。」
画像が揺れるように霞んだ状態から、雪だるまの形がクッキリと現れてヌイグルミが出現する。
私(アバター)の横に立ち、私を見上げた姿。声は、あの男の子。
スカートの形が、バルーンなのが納得できた。配慮なのだろうか?
「名前は、何かな……?」
小さな呟き。
現実の私は、PCの前で椅子に座っている。
画像を見ているだけの傍観者で、疑問が口から、小さな声で漏れただけ。
それを、どのように聞き取ったのか……雪だるまは、自己紹介を含めて会話を始める。
「カコ、僕の名前はタクマ。今日、ヒロインになって欲しいんだ。」
“カコ”はアバターの名、私の名、未來(みらい)の反対。
木口さんの姿で、設定したカコとはイメージが合わないアバター。
彼の求めるのは、一時的なヒロイン。
今日……その意味するところも、彼の目的も理解できない。
晴が私に渡した何かを受け取るまで、彼の言いなり……囚われのヒロイン。
「カコ、さぁ……この文字を追って。扉が開くと、相手の見えないサイトで、犯罪がある。」
犯罪?相手の見えないチャットサイト。ヒロイン……闘うのは、私?
それとも、この小さな|雪だるま(タクマ)のアバターが、闘うのかな。
歩幅の違うアバターが走れば、距離は広がるわけで、タクマの姿は見えなくなる。
あのアバター……走るのかな?飛ぶのかな?
それとも登場の時と同様、瞬間移動みたいに現れるのだろうか。

落ちていく会話を避けながら、私(アバター)は、消えずに流れていく文字を追った。
会話の続くユーザー2人。女の子と男の子の、恋人同士のような会話。
犯罪?とても、そんな内容ではない。
しかし、気になるのは男の子の会話文字が“直接会いたい”と述べる。
大きく、太文字になったその文字が、スピードを増していく。
大きな空間に、多くのドアが点在する壁。
その一つの小さなドアに、文字は吸い込まれるように消えた。
そのドアは3階の高さだろうか、とても届くような位置ではない。
アバターは立ち止まるのかと思った。
カコは腰にあったタンバリンを手に取り、走りながら器用に揺らして、胴に付いたシンバルを奏でる。
器用なアバター。