壮大との、はじめての夜は、拍子抜けするほどあっけなく終わった。
飲み始める前から利き酒セットをいくつも空けていた彼は、楽しそうに話していたかと思うと、そのまま布団に沈み込むように眠ってしまった。
不完全燃焼。
そう思った瞬間、自分で首を振る。
何を期待してたの、私。ないないない。恥ずかしい。
翌朝、私たちは新潟市街へ向かった。
目的は、バスセンターのカレーライス。
黄色くて、理由は分からないのに、どうしても食べたくなる味だ。
券売機の前で、壮大が立ち止まる。
カレーライス、カレーそば、その他。
真剣に悩んでいる横顔が、やけにかわいい。
私がカレーライスを押すと、壮大はカレーそばを選んで言った。
「初バスセンターは、民亜の皿からもらうとして。オレは、民亜が次によく食べてるやつ」
一瞬、思考が止まる。
そんなこと、数えた覚えはない。
でも、確かにそうだった。
写真を撮ったカレーを、彼がじっと見つめる。
「どうぞ」と言う前に、スプーンが私の口元に来た。
初バスセンターのカレーも、私にあーん。
かわいい。
危険なほどに。
萬代橋の下、信濃川沿いを歩く。
バスも電車も通らない場所で、確かな幸福だけが残る。
この日一日が、記憶に沈殿していく。
だからこそ、不意打ちだった。
「帰りさ、高速バスにしない?」
足が止まる。
あの壮大が?
「もう取ってある」
やっぱり。
この人の「?」は、いつも決定事項だ。
私は高速バス、とくに2列シートにはうるさい。
落ち着かないから、必ず一人で二席使い。
それは、何度も公言してきた鉄の掟。
なのに。
「2列、隣り同士?」
声が裏返る私に、壮大はにこっと笑った。
「民鉄チャンネルで見たよ。2列で、カップルがいちゃいちゃしてたやつ」
拾うとこ、そこ?
発車時刻を気にする彼の横で、私の心拍だけが速くなる。
バス乗り場へ向かう途中、壮大がふと思い出したように言った。
「ねえ、個室バスってさ。2室取ったら、2人で1つ使えるの?」
主語のない質問。
なのに、対象だけははっきりしている。
「バスの中ではお静かに、って書いてありますから」
興味なさそうに返しながら、必死で平静を装う。
心臓だけが、先に高速運行に入っていた。
この人の無邪気さは、いつも私の理性を試す。
逃げ場のない距離が、もうすぐ始まる。
飲み始める前から利き酒セットをいくつも空けていた彼は、楽しそうに話していたかと思うと、そのまま布団に沈み込むように眠ってしまった。
不完全燃焼。
そう思った瞬間、自分で首を振る。
何を期待してたの、私。ないないない。恥ずかしい。
翌朝、私たちは新潟市街へ向かった。
目的は、バスセンターのカレーライス。
黄色くて、理由は分からないのに、どうしても食べたくなる味だ。
券売機の前で、壮大が立ち止まる。
カレーライス、カレーそば、その他。
真剣に悩んでいる横顔が、やけにかわいい。
私がカレーライスを押すと、壮大はカレーそばを選んで言った。
「初バスセンターは、民亜の皿からもらうとして。オレは、民亜が次によく食べてるやつ」
一瞬、思考が止まる。
そんなこと、数えた覚えはない。
でも、確かにそうだった。
写真を撮ったカレーを、彼がじっと見つめる。
「どうぞ」と言う前に、スプーンが私の口元に来た。
初バスセンターのカレーも、私にあーん。
かわいい。
危険なほどに。
萬代橋の下、信濃川沿いを歩く。
バスも電車も通らない場所で、確かな幸福だけが残る。
この日一日が、記憶に沈殿していく。
だからこそ、不意打ちだった。
「帰りさ、高速バスにしない?」
足が止まる。
あの壮大が?
「もう取ってある」
やっぱり。
この人の「?」は、いつも決定事項だ。
私は高速バス、とくに2列シートにはうるさい。
落ち着かないから、必ず一人で二席使い。
それは、何度も公言してきた鉄の掟。
なのに。
「2列、隣り同士?」
声が裏返る私に、壮大はにこっと笑った。
「民鉄チャンネルで見たよ。2列で、カップルがいちゃいちゃしてたやつ」
拾うとこ、そこ?
発車時刻を気にする彼の横で、私の心拍だけが速くなる。
バス乗り場へ向かう途中、壮大がふと思い出したように言った。
「ねえ、個室バスってさ。2室取ったら、2人で1つ使えるの?」
主語のない質問。
なのに、対象だけははっきりしている。
「バスの中ではお静かに、って書いてありますから」
興味なさそうに返しながら、必死で平静を装う。
心臓だけが、先に高速運行に入っていた。
この人の無邪気さは、いつも私の理性を試す。
逃げ場のない距離が、もうすぐ始まる。
