僕が初めて彼女と出会ったのは高等部に入学して一ヶ月くらい経った時のことだった。
いつも僕の周りを取り囲む女子達の猫なで声にうんざりしていた時、離れた所に彼女の姿を見つけた。
彼女が僕について友人に熱く語っていたのをよく覚えている。
その時、彼女は僕に対してこう言ったんだ。
「東条先輩は優しくて温かい人なんだよ!」
嬉しそうに満面の笑みを浮かべる彼女を僕は不思議に思った。
(なんで僕のことなんか大して知らないくせにそんなこと言えるんだよ…)
今思えばこの時から彼女を気にかけていたのかもしれない。
ある日、生徒会室で彼女に僕の本性がバレた時は本当に終わったと思った。
また…僕から人が離れていくんだ…と。
だから僕は彼女に口止めをした。
絶対に僕の本性はバラさないこと。
その代わりに僕の彼女にすることで近くで監視できるし、その上僕のことが好きであろう彼女にとっても悪くない条件だと思った。
今回のトラブルは僕が思っている以上に何事もなく、上手く収まった。
しかし唯一予想外だった事は、彼女が僕の恋人役を嫌がったことだ。
(あんなに僕のこと熱く語ってたのに…
結局は取り繕った僕じゃないとダメなんじゃないか…)
そう思ってた時、
「東条先輩の性格が、笑顔が作り物だったとしても私の気持ちが変わったりしません。」
彼女はたしかにこう言った。
(あれだけ皮肉も嫌味も言ったのに…)
それでも彼女の瞳はまっすぐに僕を見ていた。
僕は今まで彼女にしてきたことの後ろめたさで目を合わせられなかった。
ただ俯く僕に、
「何も知らないのに、勝手なこと言ってすみませんでした。」
と、気遣ってくれる彼女はどこまでも優しい人だと思う。
振り返って帰ろうとする彼女に僕は願いを込めて言った。
「もし僕が冷酷で腹黒な最低な人間だと言ったら…」
「それでも…変わらずにいてくれる?」
(もし…彼女がそれでも良いと言ってくれるなら、
それだけで…)
「もちろんです!!」
彼女ははっきりとそう言った。
彼女が…、咲良優が初めて僕に見せる笑顔だった。
そのまっすぐ僕を見据える瞳には肩書きなんてなく、1人の人間として、僕自身として見てくれているような感じがした。
そんな些細なことがどうしようもなく嬉しくて、心地よくて。
やっと僕は…、救われたような気がした。
「あっ!じゃあ私はこれで!お時間ありがとうございました!」
彼女は何かを思い出したように急いで駆け出して行った。
走り去って行った彼女の背を見つめながら考える。
(彼女をもっと知りたい…)
(彼女ともっと一緒にいたい…)
(彼女だけは…)
「手放したくない…」
思わず口から漏れた本音。
僕は初めて知るこの感情の名前をまだ知らない。
でも、大切にしなければと思った。
この感情も、彼女のことも、僕が守らなければ…
そう決意を固めた。
爽やかな風が僕の背中を押すように強く吹いていた。
いつも僕の周りを取り囲む女子達の猫なで声にうんざりしていた時、離れた所に彼女の姿を見つけた。
彼女が僕について友人に熱く語っていたのをよく覚えている。
その時、彼女は僕に対してこう言ったんだ。
「東条先輩は優しくて温かい人なんだよ!」
嬉しそうに満面の笑みを浮かべる彼女を僕は不思議に思った。
(なんで僕のことなんか大して知らないくせにそんなこと言えるんだよ…)
今思えばこの時から彼女を気にかけていたのかもしれない。
ある日、生徒会室で彼女に僕の本性がバレた時は本当に終わったと思った。
また…僕から人が離れていくんだ…と。
だから僕は彼女に口止めをした。
絶対に僕の本性はバラさないこと。
その代わりに僕の彼女にすることで近くで監視できるし、その上僕のことが好きであろう彼女にとっても悪くない条件だと思った。
今回のトラブルは僕が思っている以上に何事もなく、上手く収まった。
しかし唯一予想外だった事は、彼女が僕の恋人役を嫌がったことだ。
(あんなに僕のこと熱く語ってたのに…
結局は取り繕った僕じゃないとダメなんじゃないか…)
そう思ってた時、
「東条先輩の性格が、笑顔が作り物だったとしても私の気持ちが変わったりしません。」
彼女はたしかにこう言った。
(あれだけ皮肉も嫌味も言ったのに…)
それでも彼女の瞳はまっすぐに僕を見ていた。
僕は今まで彼女にしてきたことの後ろめたさで目を合わせられなかった。
ただ俯く僕に、
「何も知らないのに、勝手なこと言ってすみませんでした。」
と、気遣ってくれる彼女はどこまでも優しい人だと思う。
振り返って帰ろうとする彼女に僕は願いを込めて言った。
「もし僕が冷酷で腹黒な最低な人間だと言ったら…」
「それでも…変わらずにいてくれる?」
(もし…彼女がそれでも良いと言ってくれるなら、
それだけで…)
「もちろんです!!」
彼女ははっきりとそう言った。
彼女が…、咲良優が初めて僕に見せる笑顔だった。
そのまっすぐ僕を見据える瞳には肩書きなんてなく、1人の人間として、僕自身として見てくれているような感じがした。
そんな些細なことがどうしようもなく嬉しくて、心地よくて。
やっと僕は…、救われたような気がした。
「あっ!じゃあ私はこれで!お時間ありがとうございました!」
彼女は何かを思い出したように急いで駆け出して行った。
走り去って行った彼女の背を見つめながら考える。
(彼女をもっと知りたい…)
(彼女ともっと一緒にいたい…)
(彼女だけは…)
「手放したくない…」
思わず口から漏れた本音。
僕は初めて知るこの感情の名前をまだ知らない。
でも、大切にしなければと思った。
この感情も、彼女のことも、僕が守らなければ…
そう決意を固めた。
爽やかな風が僕の背中を押すように強く吹いていた。
