腹黒王子の愛は、激甘でした。

「お待たせしました!オムライスです!」

私は2人の前に料理を運んだ。

ふわっと広がるいい香りに、2人とも視線を落とす。

「美味しそう」

颯汰先輩が柔らかく微笑む。

「ほんとだね。ちゃんとしてるじゃん」

廉先輩も感心したように言った。

「もちろん、ちゃんとしてますよ!」

思わず少し強めに返してしまう。

そんな私を見て、2人は同時にくすっと笑った。

「優、これ作ったの?」

颯汰先輩が聞いてくる。

「いえ!私は運ぶ担当なので!」

「そっか。でもすごく似合ってるよ」

「えっ……?」

不意にそんなことを言われて、思わず固まる。

「そのTシャツも、接客してる感じも」

「ちゃんと“看板娘”って感じ」

優しく微笑みながら言われて、顔が一気に熱くなる。

(な、なにそれ……!)

どう反応していいか分からない。

するとすぐに──

「たしかに」

廉先輩がさらっと口を挟んだ。

「え?」

「めっちゃ可愛いし。さっきから他の客も結構見てたよ」

「なっ……!?」

思わず言葉を失う。

(そんなこと言わなくていいのに……!)

恥ずかしさでいっぱいになる。

「優、顔真っ赤だよ」

くすっと笑う廉先輩。

「もうっ……からかわないでください!」

私は思わず頬を押さえた。

そんなやり取りを見ていた颯汰先輩が、ふっと口を開く。

「優」

「は、はい!」

名前を呼ばれて、ピシッと背筋が伸びる。

「このあと、休憩ある?」

「えっと……あと少しで交代時間です!」

「そっか」

颯汰先輩は少しだけ考えるような表情をしたあと、

「じゃあさ」

と、ゆっくり続けた。

「休憩入ったら、一緒に文化祭回らない?」

「え……?」

一瞬、意味が理解できなかった。

(い、一緒に回るって……!?)

頭が真っ白になる。

すると──

「待って、俺も優と文化祭回りたい」

すぐ隣から声が重なる。

「えっ!?」

振り向くと、廉先輩がニヤッと笑っていた。

「せっかくだしさ。優と回りたいなって」

さらっと言われて、心臓がドクンと跳ねる。

「え、えっと……その……」

完全に混乱する。

(ど、どうすればいいの!?)

2人の雰囲気が、ピリッとする。

完全に2人の間には火花が散っているように見えた。

(なにこの状況……!?)

私だけが置いていかれている。

そのとき。

「じゃあさ」

廉先輩がふっと肩の力を抜いた。

「時間で交代しようよ?」

「……時間?」

颯汰先輩が眉をひそめる。

「うん。例えば前半は俺、後半は颯汰」

「どう?」

あっけらかんと言う。

(いや、どう?と言われましても…!)

頭が追いつかない。

颯汰先輩は少しだけ考えるように黙ったあと、

「たしかに、それなら公平だし…」

と、小さくうなずいた。

「えっ、いいんですか!?」

思わず声が出る。

「優が困るのも嫌だしね」

颯汰先輩は優しくそう言った。

でもその目は、どこか本気だった。

「じゃあ決まり」

廉先輩が軽く手を叩く。

「優、休憩入ったら呼びに来るから」

「えっ、ちょっと待ってください私の意思は!?」

思わずツッコミを入れる。

すると2人は同時にこちらを見て──

「優は嫌?」

「断る?」

ぴったり同じタイミングで聞いてきた。

(む、無理……!!)

そんなの答えられるわけがない。

「……い、行きます……」

小さくそう答えるのが精一杯だった。

その瞬間。

「よかった」

「決まりだね」

2人が同時に微笑む。

(なにこれ……ほんとにどうなってるの……!?)

心臓の音がうるさくて仕方ない。

文化祭の賑やかな空気の中で。

私の知らないところで、確実に何かが動き始めていた。