腹黒王子の愛は、激甘でした。

あれからテストが始まり、あっという間に数日後。

答案用紙が返却されるたびに、私は自分の目を疑っていた。

(え……うそ……)

英語も、数学も、苦手だった科目まで。

今まで見たことない点数が並んでいる。

(これって……もしかして……)

胸がじんわりと熱くなる。

思い浮かぶのは、あの放課後。

生徒会室で一緒に問題を解いてくれた時間。

分かるまで根気強く教えてくれた2人の姿。

(……ちゃんと、結果出せた)

その瞬間、どうしても伝えたくなった。

放課後。

私は足早に生徒会室へ向かう。

ドアの前で一度立ち止まって、深呼吸。

(よし……!)

コンコン、とノックをして扉を開ける。

「失礼します!」

中にいたのは、やっぱりその2人だった。

「優?」

「お、来た」

同時に視線が向く。

それだけで、少しだけ心臓が跳ねる。

(まだちょっと緊張するかも……)

でも、今日はちゃんと伝えたい。

私は一歩前に出て、ぎゅっと手を握った。

「テスト……返ってきました!」

「どうだった?」

颯汰先輩が優しく聞いてくれる。

廉先輩も、興味ありげにこっちを見ている。

「……すごく、良かったです!」

そう言って、私は答案用紙を見せた。

一瞬の沈黙。

そして――

「え、すごくない?」

廉先輩が素直に驚いた声を出す。

「うん、すごいね」

颯汰先輩も、ふっと柔らかく笑った。

「ちゃんと成果出てる」

その言葉に、胸がじんわりと温かくなる。

「2人のおかげです!」

思わず声が少し大きくなる。

「本当に、ありがとうございました!」

ぺこりと頭を下げる。

すると、

「いやいや、優が頑張ったからだよ」

「そうそう。俺らちょっと手伝っただけ」

2人とも当たり前みたいにそう言う。

でも、私は首を横に振った。

「そんなことないです!」

まっすぐ2人を見る。

「2人が教えてくれなかったら、絶対こんな点数取れなかったです」

言葉にしながら、改めて実感する。

(本当に、感謝してる)

「だから……!」

少しだけ緊張しながら、続ける。

「もしよければ……お礼、させてほしいです!」

その言葉に、2人が少しだけ目を丸くした。

「お礼?」

「はい!」

私はこくんと頷く。

「何でもいいので……!」

そう言った瞬間、

「じゃあさ」

先に口を開いたのは、颯汰先輩だった。

「今度の休み、一緒に出かけない?」

「……え?」

思わず、間の抜けた声が出る。

「せっかくだし、どこか行こう」

さらっと言う颯汰先輩。

でも、その目はどこか少しだけ真剣で。

(……お出かけ?2人で?)

一気に顔が熱くなる。

「え、あの、それって……」

言葉がうまく出てこない。

そんな私を見て、颯汰先輩は少しだけ笑った。

「嫌?」

「い、嫌じゃないです!!」

即答してしまう。

そのあとでハッとして、さらに顔が熱くなる。

横から、

「ははっ、即答じゃん」

廉先輩の楽しそうな声が聞こえた。

「う、うるさいです……!」

思わずそっちを睨むと、廉先輩は肩をすくめる。

でもその表情は、どこか優しくて。

(……?)

一瞬だけ違和感を覚えるけど、

それよりも今は――

「じゃあ決まりだね」

颯汰先輩の声。

「空いてる日、あとで教えて」

そう言って、優しく微笑む。

その笑顔に、胸がドクンと鳴る。

(どうしよう……)

嬉しい。

でも、それ以上に。

(めちゃくちゃ緊張する……!)

「……はい」

小さく頷くのが精一杯だった。

そんな私を見て、

「楽しみだね」

と颯汰先輩が言う。

その言葉に、

また心臓がうるさくなる。

――その少し後ろで。

廉先輩が、何も言わずに静かに笑っていたことに、

私はまだ気づいていなかった。