腹黒王子の愛は、激甘でした。

「へぇ、2人で勉強会?」

ピリついた空気に私が慌てていると、颯汰先輩がフォローしてくれた。

「もうすぐテストが近いから復習してるんだよ」

「ふーん?」

廉先輩は意味ありげに笑うと、

そのまま——

私の隣に、すとんと座った。

「じゃあ俺も混ぜてよ」

「……え?」

あまりにも自然すぎて、一瞬理解が追いつかない。

(え、え、え!?)

気づけば、右隣には廉先輩。

左隣には颯汰先輩。

(なにこの状況!?)

一気に心臓がうるさくなる。

「いいでしょ?どうせ空いてるんだし」

廉先輩はさらっと言う。

その言葉に、私は反射的に颯汰先輩の方を見た。

颯汰先輩は——

「……別にいいけど」

一応そう答えたけど、

ほんの少しだけ眉が寄っている気がした。

(あれ……?)

でもすぐにいつもの表情に戻って、

「集中できるならね」

と、静かに言った。

「大丈夫大丈夫、邪魔しないって」

廉先輩は軽く笑って、机に肘をついた。

その距離が、さっきよりぐっと近い。

(ち、近い近い近い……!)

さっきまででも十分ドキドキしてたのに、

両側から挟まれる形になって、完全にキャパオーバーだ。

「優、さっきどこやってたの?」

廉先輩がひょいっと私のノートを覗き込む。

「え、あ、ここです!」

「んー……ああこれね」

さらっと問題を見て、

「ここはこう考えたら早いよ」

と、すぐに解き方を教えてくれる。

(すごい……分かりやすい……!)

思わず目を輝かせると、

「でしょ?」

と、ちょっと得意げに笑った。

「ありがとうございます!」

素直にお礼を言うと、

廉先輩は一瞬だけ、ほんの少しだけ柔らかい顔をした。

でもすぐに、いつもの調子に戻る。

その様子を、颯汰先輩が静かに見ていた。

「……優」

「はい!」

名前を呼ばれて、びくっとする。

「さっきの続き、やるよ」

「あ、はい!」

颯汰先輩は淡々と問題を指し示す。

その声はいつも通り落ち着いているのに、

どこかほんの少しだけ、低い気がした。

(……気のせい?)

「ほら、ここ間違ってる」

「あ、ほんとだ……!」

「だからさっき言ったでしょ」

少しだけ近づいて説明してくれる颯汰先輩。

その距離にドキッとするのと同時に、

反対側からも視線を感じる。

「……へぇ」

ぽつりと、廉先輩が呟いた。

「会長、教え方うまいじゃん」

軽い口調だけど、その奥に何か含んでいるような気がする。

「普通だよ」

颯汰先輩はさらっと返す。

視線はノートのままなのに、

空気はどこか張り詰めている。

(な、なんか……変な感じ……)

2人ともいつも通りなのに、

どこか違う。

言葉には出てこないけど、

見えない何かがぶつかってるような——

そんな空気。

でも私は、その理由が分からなくて。

ただ、挟まれる形で座りながら、

ドキドキと戸惑いが止まらなかった。

* * *

Side 白流 廉

(……ほんと、分かりやすいな)

心の中でそう呟く。

優は全然気づいてない。

颯汰がどれだけ意識してるかも、

自分がどんな気持ちでここにいるかも。

(俺は……邪魔する気、ないんだけどな)

そう思いながらも、

無意識に優の方へ少しだけ体を寄せてしまう。

(……でも、これくらいはいいよな)

そんな風に自分に言い訳しながら、

廉はいつも通りの笑顔を浮かべた。

 

穏やかなはずの勉強会は、

気づかないうちに、

少しずつバランスを崩し始めていた——。