勘違い一夜から始まる極甘策士なドクターの激愛婚〜偽装結婚は旦那様の甘い罠でした〜

「あれ、八影さん?」
「あ、お疲れ様です。皮膚科に営業に来ていて、ちょっと散歩して帰ろうかと思ったら先生がいたので。退院する子の写真を撮ってあげていたんですか?」

 なんとなく緊張しながら問いかけると、彼はふわっと微笑んでうなずく。

「そう、俺も休憩するところだったから。入院したときには不安そうだった顔が、見違えるくらい明るくなるとうれしくてさ。写真に残したくなるんだよね」

 今の言葉や、帰っていくご家族を見送る彼のとても優しい表情を見て、漠然と思う。この人はやっぱり遊び人なんかではないんじゃないかと。

 でも、打ち合わせのときとは雰囲気が違う。厳しさがなくなって、あんなにやわらかくて明るい表情になるんだな。

 なんて考えていると、芹澤先生は私ににこっと微笑みかける。

「立ち話もなんだし、時間あるなら一緒に三時のおやつ食べる?」
「えっ」

 まるで子どもを誘うようなひと言にきょとんとする私に、おいでおいでと手招きする彼。戸惑いながらもついていくと、彼はベンチに腰かけて白衣のポケットの中からなにかを取り出す。

「はい、あげる」と差し出されたものは、個包装されたキャンディ。なんだかかわいらしくてきゅんとしつつ、「ありがとうございます」と素直に受け取った。