営業もうまくいき、ほんの数分だけれど余談を楽しんで、私たちは応接室を後にした。肩の力を抜き、満足感を抱いて院内を歩く。
「好感触でよかった。シェーレを贔屓にしてくださっているのもありがたいですね」
「あ、ああ。でも、今回は八影さんの成果だよ。贔屓にされているのは君の方かもしれないなぁ」
ぎこちなく笑って野島さんがまた嫌みっぽく言うので、私の心にはピシッとヒビが入ってばかりだ。
まあ、さっきの芹澤先生の言葉が効いているのだろう。手術には私が立ち会えることになったし、この人に軽くお説教してくれて正直スカッとしている。
品よく微笑む私の心の中がこんなふうに荒んでいるとは思いもしないだろう野島さんは、急に小声になって言う。
「それにしても、芹澤先生が遊び人っていう噂は本当なのかねぇ」
「えっ、遊び人?」
「まだ結婚してないし、女性関係はだらしないんだと。特定の恋人を作らないとか、患者に手を出してるんじゃないかとか、いろいろ疑惑があるみたいだな」



