ここは風情豊かな雰囲気が魅力の、歴史ある温泉地。極寒の空気から逃れるように湯気が立ち上る湯船に浸かると、冷えた身体が一瞬で温まっていく。
「はぁ~最高……! やっぱ癒やされたいときは温泉に限るわ」
「ん~、気持ちいいねぇ」
隣で親友の美桜がとろけきった顔で言い、私も同様に深いため息を吐いて脱力した。
バレンタインの今日、甘い予定などない私たちは、東京から少し足を延ばして伊香保温泉にやって来た。白く染まった山並みを眺めて浸かる露天風呂は、泉質も景色もよくてまさに至福だ。
ここへ来たのは、美桜がとにかく癒やされたがっていたから。どうやら年末に恋愛関係のゴタゴタがあったようなのだ。
茶褐色のお湯を腕にすべらせ、すでに肌がなめらかになっているのを感じながら問いかける。
「元カレに言い寄られたのがそんなにストレスだったの?」
「超~ストレス。私と別れてから何人もの女と付き合っておいて、『やっぱりお前じゃなきゃダメだ』って言われても、ときめきなんかしないわよ。なに様!?って感じ」
眉間にシワを寄せて文句を言う美桜の横顔は、怒っていても綺麗だ。髪をアップにしたうなじが色っぽい……。



