さっそくその日の晩ごはんの時に夏帆は柊慈にお願いをしてみた。
「柊慈さん、お願いがあるの」
夏帆は箸を置いた。
柊慈は箸を止めて夏帆の顔を見る。
「どうした?」
夏帆は小林ママから借りた雑誌をテーブルの中央に広げ柊慈に見せた。
出された雑誌に目をやる柊慈。
「私、この島に行ってきたいの。許してくれるならすぐにでも…」
夏帆はある小さな離島を指さして柊慈にそうお願いした。
突然の夏帆の申し出に柊慈は驚き眉を寄せた。
「どうしていきなり?」
「理由は…自分でもよくわからないの…」
夏帆は視線を落としたままそう言った。
「なぜかひき寄せられるというか…。ここに行ったら元気になれそうな気がするの」
すごく行きたいのにはっきりとした理由がない。
そのことに夏帆自身も戸惑ってはいた。
しかしこの際、理由はなんでもよかった。
この島に行けたら自分の中で何かが変わる、それだけだったのだから。
じーっと夏帆を見つめていた柊慈が口を開く。
「定期船は平日しかないんだね。今すぐにってことは夏帆一人で行くってこと?」
「…うん。家を空けてしまうから柊慈さんに迷惑はかけてしまうけど…」
「GWまで待てば俺も一緒にいけるのに。それじゃダメなの?」
「私、一人でも大丈夫よ」
夏帆が小さく笑った。
ここで柊慈が小さく溜息をついて箸を置いた。
「夏帆は最近、元気がないよね?」
「え?…うん」
「青森が恋しくなって気持ちが辛くなってくる時期だよね。それを俺に隠してない?」
隠していた本音を見透かされていて夏帆は言葉につまった。
「……柊慈さんに心配かけたくなくて」
小さな声で夏帆はそう呟いた。
「夏帆は遠慮しすぎる。寂しくて辛いって俺に愚痴っていいんだよ?」
「…うん。ごめん…」
「そうでないと夏帆に気を遣わせ過ぎて俺も申し訳なくなる」
「私っそんなつもりじゃ…」
夏帆が顔を上げて弁解しようとしたら柊慈が笑って話を被せてきた。
「夏帆の気持ちはわかってるよ。でも、これからはちゃんと俺を頼って」
「うん。そう言ってくれて嬉しい…。ありがとう」
夏帆は柊慈の優しさにが胸にしみて泣きたくなってくる。
テーブルを挟んで柊慈の手が伸びてきた。
夏帆も嬉しくてその手に自分を重ねた。
顔を柔らかく崩した柊慈は肘をつき夏帆の顔を覗き込む。
「この島には俺も一緒に行く」
その提案に夏帆は驚き目を開いて柊慈を見返した。
「でも2日もお休みを取らないといけないよ? 柊慈さんは仕事が忙しいのに迷惑をかけちゃう…」
柊慈は重なっている夏帆の手をそっと握った。そして、夏帆にまっすぐな視線を向けた。
「ねえ、夏帆」
「なに…?」
「俺が鹿児島に異動が決まったとき、夏帆は喜んで一緒についてくることを選んでくれた。一度も青森から離れたことがないのに迷うことなく。俺がどんなに嬉しかったかわかる?」
「…当然のことだと思っていたから」
「俺はその時、心に誓ったよ。こんな心意気のある奥さんを俺は何があっても守るって」
「柊慈さん…」
もうたまらず夏帆の目に涙がたまってしまう。
「だから夏帆が島に行って元気になるなら俺は喜んでついていく。夏帆が来るなって言ってもね」
柊慈はいたずらっ子のように笑ってくれた。
「柊慈さん…ありがとう…」
これもきっと夏帆が重く受け止めないようにしてくれているんだ。
夏帆は柊慈のその気配りが本当に嬉しかった。
「で、夏帆は今日も眠たかった?」
「え? なんでわかるの?」
柊慈はほうれん草の胡麻和えに視線を向けた。
「この味付け、忘れてる」
「あっ、味見するの忘れていたから気が付かなかった」
慌てて調味料を取りに行こうとする夏帆を引き留め、
「いいよ。お醤油で充分だよ」
いつもの柊慈の笑顔を見せてくれた。
「な、これで夏帆一人で旅行に行かせられないだろう?」
「…お世話になります」
と夏帆と柊慈は目を合わせて笑った。
「柊慈さん、お願いがあるの」
夏帆は箸を置いた。
柊慈は箸を止めて夏帆の顔を見る。
「どうした?」
夏帆は小林ママから借りた雑誌をテーブルの中央に広げ柊慈に見せた。
出された雑誌に目をやる柊慈。
「私、この島に行ってきたいの。許してくれるならすぐにでも…」
夏帆はある小さな離島を指さして柊慈にそうお願いした。
突然の夏帆の申し出に柊慈は驚き眉を寄せた。
「どうしていきなり?」
「理由は…自分でもよくわからないの…」
夏帆は視線を落としたままそう言った。
「なぜかひき寄せられるというか…。ここに行ったら元気になれそうな気がするの」
すごく行きたいのにはっきりとした理由がない。
そのことに夏帆自身も戸惑ってはいた。
しかしこの際、理由はなんでもよかった。
この島に行けたら自分の中で何かが変わる、それだけだったのだから。
じーっと夏帆を見つめていた柊慈が口を開く。
「定期船は平日しかないんだね。今すぐにってことは夏帆一人で行くってこと?」
「…うん。家を空けてしまうから柊慈さんに迷惑はかけてしまうけど…」
「GWまで待てば俺も一緒にいけるのに。それじゃダメなの?」
「私、一人でも大丈夫よ」
夏帆が小さく笑った。
ここで柊慈が小さく溜息をついて箸を置いた。
「夏帆は最近、元気がないよね?」
「え?…うん」
「青森が恋しくなって気持ちが辛くなってくる時期だよね。それを俺に隠してない?」
隠していた本音を見透かされていて夏帆は言葉につまった。
「……柊慈さんに心配かけたくなくて」
小さな声で夏帆はそう呟いた。
「夏帆は遠慮しすぎる。寂しくて辛いって俺に愚痴っていいんだよ?」
「…うん。ごめん…」
「そうでないと夏帆に気を遣わせ過ぎて俺も申し訳なくなる」
「私っそんなつもりじゃ…」
夏帆が顔を上げて弁解しようとしたら柊慈が笑って話を被せてきた。
「夏帆の気持ちはわかってるよ。でも、これからはちゃんと俺を頼って」
「うん。そう言ってくれて嬉しい…。ありがとう」
夏帆は柊慈の優しさにが胸にしみて泣きたくなってくる。
テーブルを挟んで柊慈の手が伸びてきた。
夏帆も嬉しくてその手に自分を重ねた。
顔を柔らかく崩した柊慈は肘をつき夏帆の顔を覗き込む。
「この島には俺も一緒に行く」
その提案に夏帆は驚き目を開いて柊慈を見返した。
「でも2日もお休みを取らないといけないよ? 柊慈さんは仕事が忙しいのに迷惑をかけちゃう…」
柊慈は重なっている夏帆の手をそっと握った。そして、夏帆にまっすぐな視線を向けた。
「ねえ、夏帆」
「なに…?」
「俺が鹿児島に異動が決まったとき、夏帆は喜んで一緒についてくることを選んでくれた。一度も青森から離れたことがないのに迷うことなく。俺がどんなに嬉しかったかわかる?」
「…当然のことだと思っていたから」
「俺はその時、心に誓ったよ。こんな心意気のある奥さんを俺は何があっても守るって」
「柊慈さん…」
もうたまらず夏帆の目に涙がたまってしまう。
「だから夏帆が島に行って元気になるなら俺は喜んでついていく。夏帆が来るなって言ってもね」
柊慈はいたずらっ子のように笑ってくれた。
「柊慈さん…ありがとう…」
これもきっと夏帆が重く受け止めないようにしてくれているんだ。
夏帆は柊慈のその気配りが本当に嬉しかった。
「で、夏帆は今日も眠たかった?」
「え? なんでわかるの?」
柊慈はほうれん草の胡麻和えに視線を向けた。
「この味付け、忘れてる」
「あっ、味見するの忘れていたから気が付かなかった」
慌てて調味料を取りに行こうとする夏帆を引き留め、
「いいよ。お醤油で充分だよ」
いつもの柊慈の笑顔を見せてくれた。
「な、これで夏帆一人で旅行に行かせられないだろう?」
「…お世話になります」
と夏帆と柊慈は目を合わせて笑った。

