あさの微熱が醒めない



꙳.☽



 まるで、空の藍が反転するようで。きらきらする視界とふわふわの思考がきもちよかった。


 お酒はぜんぜん強くないし多く飲まないようにしていたのに、彼との時間が心地よかったからか、美味しく飲みすぎてしまったの。

 
 それと、彼のことをまったく警戒していなかったこともアルコールに手を伸ばしてしまった一因だと思う。



「浅井さん、今日はありがとうございました。こんなに美味しい焼肉、麻子さんに頭が上がりませんね」


「ふふ、美味しかったぁ……っわ、」



 ふらつく足元をコントロールできなくてよろめく。倒れ込んでしまいそうなわたしの身体を支えたのは彼だった。冬のつめたい温度に、溶けて馴染んで重なる体温。

 見上げると、相変わらずの分厚いレンズの眼鏡が視線を遮断していた。



「危ない、浅井さん足元ふらふらです。送っていきます」



 穏やかで丁寧な声色がわたしの鼓膜を揺らす。わたしより年上のはずなのに、この人は出会ってから今日までずっと敬語だ。

 
 タメ口でいいのに、と浮かばせる余白はあるけれど、ただしく考える力はどこかに……そうだきっと、焼肉屋さんに置いてきてしまった。