地元なじみ。

「あの……よければ……これ」

そう言ってカバンから私のネクタイを取り出し、陽向に差し出す。

「陽向、いつも着けてないの知ってるんだけど……持っててくれない?」

少し驚きながらも受け取ってくれた陽向は、そのまま着け始めた。

「い、今?」
「うん」
「ダメだよ、せめて学校出てから……」
「どう?」

私の話、全然聞いていないし。
でも、ご機嫌に私のネクタイをする陽向を見て、きゅんとしてしまう私も私だ。

「……かっこいい」
「これから毎日着ける」
「そんなっいいよ!普段してないんだし」
「朱莉のだったら着けたいけど」

また真顔でサラッと言うから、何も言えなくなってしまう。
そして、そういう私もきっと、これからは毎日陽向のネクタイを着けると思う。


「さ、行くか」
「うん」

先に立ち上がった陽向が私の方へ手を伸ばす。
その手を取って私も立ち上がると、陽向がほんの一瞬、ぎゅっと抱きしめてくれた。

動作の合間の流れるようなわずか数秒だけなのに、一気に鼓動が跳ね上がる。
最後に頭をポンポンとされ離れ、手を繋いで歩き始める。

自然なこの一連の流れにドキドキしつつ、陽向との距離がまた縮まったような気がして嬉しくなる。


目立たないように、けれども急いで校門へ向かう。
何とか無事に校門の外へたどり着いた時、私は思っていたことを伝える。

「……陽向」
「ん?」
「わ、私……したいことあった」
「何?」
「……制服デート。そ、そのつまり……このまま、もう少し一緒にいたいです」
「……俺も」

校門を出てから駅までの道のりには、まだちらほら北高生がいて、何人かからは視線も感じる。
陽向がぎゅっと握ってくれている手を離さないよう、私も強く握る。
堂々と、2人で歩いていく。

「朱莉、どこ行きたいとかある?」
「……みなとみらい」
「王道。いいね」


気づけば、すっかり雨は上がっていた。

お互いのネクタイを身に着け、みなとみらいで制服デート。
いつも私を気にかけて、受け止めて、お願いを叶えてくれる陽向に感謝して幸せをかみしめる。

私も同じくらい返せていけたらいいな。