地元なじみ。


ドンドンドーン――


花火大会も終盤。
連続でしだれ花火が打ちあがって、夜空を彩る。
周囲もわー!と盛り上がっている。


けれど……そんな状況とは反対に、早川くんは静かだ。
いつも静かな方ではあるけれど、そういうのではなく。

花火を見ているのだし、会話があまりないのも普通かもしれないけれど。
いつもの……私の大好きなあの沈黙の空気感とは違うから気になってしまう。

「もうすぐ終わっちゃうね」
「な」

こんな感じで返事はしてくれるけれど、どこか上の空だ。

肩は触れているし、距離は近い。
でもなんだか遠い。

少しずつ不安がこみ上げて来ながら、花火大会が終わってしまった。




来た時以上の混雑で、もみくちゃにされながらの帰り道。
はぐれないように歩くのが精一杯で、話している余裕なんてないような状態ではあるけれど。
いつもより口数少なく、桜木町駅まで来た。

ここまでもずっと手は繋いできた。
人すごいね、といったような会話はしてきた。
だけど、どこか遠い。


電車の中は今までに経験したことのない混雑で。
前から後ろから横から……どんどん押される。

「……!」
「大丈夫?」

埋もれてしまいそうな私を守るように、早川くんが背中に手を回してくれる。
何だか声を聞くのも近づくのも久しぶりな感じがして、色々な感情がこみ上げてくる。

この感じ、一緒にバスケの試合を見に行った日の帰りを思い出す。

けれど、遠慮がちにそっと肩に手を回してくれたあの時とは違う。
関係が変わったことを実感できる、背中に回る力強い手。

私も遠慮なく早川くんに、ぎゅっとくっつく。
あの時は出来なかったこと。
この混雑。くっついたっておかしくないし、きっと誰も見ていない。
いつもの電車なら絶対にしないけれど、今はこうしていたい。

「藤沢……?」

大丈夫。今は確かに、付き合っている2人の距離感だと思う。
安心できて、世界一幸せな胸の中。