地元なじみ。

「はあ……平塚、デンモク取って」
「……ひなた歌うの?」
「歌えって言われるし。まあさすがに1人だけ歌わないのもアレだし……」

驚いた。ひなたとは付き合いも長いし、カラオケだって何度も行ったことあるけれど、俺もひなたが歌っている所はほとんど見たことがない。

「へー珍しい」
「団体の輪を乱しちゃいけないらしいし」

その言い方は誰かに言われたってことだろ。
1人しか思いつかないけれど。

「何歌うの?」
「んー……これ……かな」

ひなたが持つデンモクをのぞき込むと、「スノークリスマス」という曲名が表示されていた。
このバンド……確か少し前に藤沢が茅ヶ崎にオススメって話していたバンドな気がする。

なるほど。ひなたか藤沢か、どちらが先に好きなったのかはわからないけれど、2人とも好きなバンドの歌か。
……なんか、甘酸っぱくて俺は勝手に恥ずかしくなっているよ。

でもこういう恥ずかしさなら大歓迎。ひなたに良い影響を与えてくれる藤沢にも感謝。

「三島、ひなたが柔らかくなってきて、色々な顔を見せるようになって人間味が増してるよ。うれしいな」
「……平塚、おっさんみたい」

ひなたがマイクを手に取ったタイミングで、隣の三島に突然話を振る。
おっさん……この歳でそれはちょっと嫌だな。

「まあでも、事実だろうね。俺も変わるのかな」
「……三島も恋愛すれば変わるかもね」

三島が何を変えたいのかはよくわからないけれど、今は聞かないでおこう。

異様にうまいひなたの歌声が響き渡る。
女子たちは目をハートに変えて釘付けになっている、ひなたはここぞで持っている男だ。

またライバルが増えるかもしれないけれど、頑張れ藤沢。