(仮)ヤンキーくんとピュアな恋をする

思った通り、黛は上達が早かった。最初はラケットの長さやシャトルとの距離感が掴めなくて、空振りしたり変な方向へ飛んでったりしたものの、ある程度時間が経てば普通にラリー出来るようになった。
ほぼ無言でひたすらラリーしているが、果たして彼は楽しいんだろうか…甚だ疑問である。

静まり返った私たちの様子とは打って変わって、
晴大&千尋くんは和気あいあいと楽しんでいた。
最初は、ボールを投げることも慣れない様子の千尋くんに、晴大が投げ方の指導をしていた。

「いいか? ボールはあんまり強く握ってもダメだ。手が力んじゃうからな。 まずは遠くに投げれるように、斜め上を目掛けて投げるんだ!」
「わかった!」

千尋くんは目をキラキラさせて晴大の指導を素直に聞いている。
少し遠目に離れた晴大へボールを投げると、晴大のすぐ近くまで届いた。

「やるな〜! もうこんな遠くまで投げれんじゃん!」
「晴大くんの教え方が上手いからだよ!」

なんかほのぼの〜としちゃうな。ふたりともお互いがお互いを褒めあっていて、いい関係が築けているようだ。

その後もしばらくラリーを続けていたが、いかんせん疲れてきた。ラリーが切れた時にふと、晴大達を見るといつの間にかキャッチボールをやめて追いかけっこをしていた。晴大達に気を取られて、黛がシャトルを打ったのに気づかなかった。

「──…雪那!」
「えっ」(コツンッ!)「いたっ!」

コントロールも完璧になってきた黛の打ったシャトルが、狙いしましたように私の頭にクリーンヒットした。慌てて黛が近寄ってくる。身長が高いから、近づくと圧がすごい。
というか、え、今、名前呼ばれた?

「悪い、大丈夫か!?」
「う、うん大丈夫!そんなに痛くなかったから!」
「どこら辺に当たった?」
「多分、この辺かな?」

黛の圧で痛みなんてとうにどこかへ行っていた。
あわあわしながら当たったであろう頭の左上辺りを指で触る。すると、黛の手がすっと伸びてきて、私の右頬と後頭部へ添えられ、顔を軽く下にくいっと向けられる。
…ゑ? 今、何が起きてる?? 黛の、手が、私の顔と頭に触れ…

(!??!?!?)
「ここら辺か?…腫れてたりはしないな。」
(っ!!? っ!!??!)

私が音もなくテンパっていると、あたったであろう部分を撫で始める。
多分、さっきのはあたった部分をよく見ようと角度を変えさせるために触って、今は怪我(してないけど)の状態を見るために撫でられている。
後頭部へ添えられた手で頭を撫でているので、頬の辺りに触れている手はそのままだ。距離も凄く近いので、傍から見れば抱きしめているように見えるだろう。さっきまで恐怖のドキドキが、今では男の子、しかも顔がとてもいい人に触れられているということで恥ずかしさからのドキドキに変わっている。触れられているところが熱くなる。
自分でも顔が真っ赤になっていることがわかった。