「さすがに後片付けはしますよ」
「大丈夫。食洗機もあるし、
少し洗剤につけておきたいから」
榊さんにそう言われて、
結局なにもできなかった。
ー私なにすればいいだろう?
お昼と夜ご飯を作ることしか考えてなく、その間になにかをすることを考えられてなかった。
「じゃあ、映画かドラマでもみる?」
榊さんがリビングに来て、ソファーに座った。
隣に座るよう促され、
私もソファーに座った。
車よりも近い距離でドキドキしてしまう。
「なにか好きなジャンルある?」
「うーん、なんでも見ます」
「そっか。
じゃあ、ランキング1位のやつ見てみようか」
榊さんは色んなことがスムーズで、
そして余裕にもみえた。
ーこういうデートも慣れているのかな?
いちいち不安になってしまう自分が嫌で、
でも不安を解消できないまま映画を見たので、ほとんど話が入っていなかった。
たまに榊さんの方を気付かれないように見たが、榊さんは映画に集中していて、
距離が近いのも気にしていないようだった。
ー今日はいつもより甘い言葉やスキンシップもないし、
私が準備してきたのも、全然意味がなかったかな…
また暗い気持ちになりつつ、
映画中だったため、そんな気持ちに気付かれていないことに安心した。
「映画面白かったね」
榊さんにそう言われて、正直全く内容を覚えていなかったが、
「そうですね」と返事をした。
映画の話をすると、
ちゃんと見ていなかったことに気付かれてしまいそうだったため、
すぐに「夕ごはん作ってもいいですか?」と立ち上がった。
「ありがとう。料理器具がどこにあるのかとか説明するね」
榊さんも一緒に台所に来て、
一通り説明を受けた。
「わかりました。少し待っていてもらえますか?」
榊さんにそう言っても、
笑顔のまま立ち去ろうとしなく、
「ここで見ていたいな」と言われた。
「見られると緊張するので」
と半ば強引にソファーに座ってもらい、
やっと榊さんに休ませることができた。
人の家で料理するのって緊張する…
そう思いながらも、
榊さんの台所は広く、ご飯が作りやすかった。


