【番外編集】三十路の社畜OLが出会った翌日に八才年下男子と結婚した件につきまして

──定時に仕事が終わり

ビルの前で彼女を待つ。

すると案外すぐ来た。

「じゃあ、行こうか」

「はい」

「どこに行く?」

二人でフラフラと歩いていると──

「森川さんって結婚してるんですか?」

唐突に聞かれた。
なんでそんな事今聞くんだよ……。

「結婚してないよ。彼女もいない」

「え!意外です」

「川崎さんがあんな若い子と結婚する方が意外だよ」

なんだか自分を取り繕うのも馬鹿馬鹿しくなってきた。

「もっと早く動けばよかった」

「はい?」

「いや、なんでもない」

とりあえず適当に店に入るか。

「あ、俺行きたい飲み屋あるんだ。そこでもいい?」

「はい!大丈夫ですよ」

と、言われたから店に入ったものの、なぜか怯えた顔をメニュー表で隠している。

「……どうした?」

「いえ、おきになさらず……」

その時、店員が料理を持ってきた。

「あら、この前婚姻届持ってきた人じゃない!!」

───は?

「あんたー!来たよあの子!」

店長が出てきた。

「お?」

「婚姻届の子」

婚姻届の子??

「え、何?なんかあったの?」

「おー!あの子は元気か?あのかっこいい兄ちゃん」

「はい……おかげさまで」

「無事に夫婦になれた?」

「はい」

「また一緒においで」

「はい、今度連れてきます」

二人は店の厨房に戻った。

何が何だかわからない。

「婚姻届ってなんのこと?」

彼女が気まずそうにしている。

「実は──」

そこで彼女は真実を全て話した。
衝撃的だった。

「告白された次の日に入籍?」

「はい。酔った勢いで……」

なんだそれ……。
天を仰いだ。
正確には天井をみていた。

「婚姻届持ってきたんだ。あの子」

「はい。びっくりしました」

負けた。
出会ってすぐに婚姻届持ってくるとか。

「それは俺にはできねーわ」

「そ、そうですよね」

「出す時も嫌がらなかったんだろ?」

「困ってたとは思います」

「……でも本気だよな。あの子」

「はい。入籍してすぐに、私を妻として扱ってくれています」

彼女の穏やかな表情が胸を抉る。

「あんな若いのにすごいなー。いくつ?」

「大学生ですね」

「まじか」

大学生って……。
若いっていいな。
自分の感情だけで突っ走れる。

「お互いのことほとんど知らないで結婚って、話題とかあるの?」

「うーん。まだ一緒に住んでないので、そこまで色々話せてはいないです」

「そうか……。まあ幸せならそれでいいか」

この訳のわからない話。
受け止めないといけない。

そのあと、色々雑談をした後、店を出た。

「いやーえらいこと聞いてしまった」

「秘密にしてください。お願いです」

俺をなんだと思っているんだよ。

「俺言うと思う?」

「いえ……森川さんは信用してます」

信用とか一番言われたくない言葉だわ。