【番外編集】三十路の社畜OLが出会った翌日に八才年下男子と結婚した件につきまして

「川崎さん、このままじゃ辞めるかもしれないですよ」

そう彼女の上司に警告すると、手のひらを返したように彼女への対応が変わった。

彼女のためなのか、自分のためなのか──

これで止まってくれればいいが。
もしかしたらそれでも辞めるかもしれない。
モタモタしてる場合じゃない。

俺は彼女に近づく決心をした。

──が

その日、定時に仕事が終わって、ビルから出ると──

川崎さんがいた。

「川崎さん」

声をかけた。
しかし彼女は誰かと一緒だった。

『男』だった。

ただ、かなり若い。
どういう関係だ?

「その子は?」

彼女が気まずそうにしている。

「えーと……」

なぜ躊躇う?
二人を見てると違和感しかない。

もしかして……

「弟?」

似てはいないが。

その時、その男が前に出た。

「夫です」

「夫……?」

夫──

頭が真っ白になった。
なんだその冗談。

「はい。俺と七海さんは夫婦です。結婚しています」

彼女が慌てている。

「あの、これには深い事情が……」

なんだ、事情って。
夫婦……結婚?

なんだよそれ。
やっと、やっと、動き出そうとしたのに。

見た目社会人じゃないだろ。
何なんだよ、どこで何があってそうなったんだよ。

でも、そんな事を言える状態じゃない。

「そうか。おめでとう」

そう言うのが精一杯。
何とか笑顔を取り繕った。

「ありがとうございます」

彼女は頭を下げた。

マジかよ。
きつ。

もう問答無用で諦めるしかないし、これ。

そんな空虚な心を必死に立て直して、彼女に言った。

「あ、俺言っておいたよ。川崎さんにこれ以上無理させるなって」

「え?」

彼女は驚いた後、また頭を下げた。

「ありがとうございます……」

何だその他人行儀な態度。

彼女にとって俺はただの会社の人間で、それ以上でもそれ以下でもなかった。

それを突きつけられた。

「じゃあ、また明日」

やってられねぇ……。