【番外編集】三十路の社畜OLが出会った翌日に八才年下男子と結婚した件につきまして

この男が例の兄なのか?
似ている。
ただ、話に聞いていたような男には見えない。

どういうことだ?

「え、七海ちゃんの彼氏?」
「会社の先輩です!」
「イケメンだし。七海ちゃんやるね!」

「勇凛くんのお兄さん?」

バレないように彼女に確認する。

「はい。二番目のお兄さんです」

二番目……?
二番目もいるのかよ。
しかもこいつも川崎さんのこと狙ってるだろ。
いや、遊んでいるのか?からかっているだけか?
どっちかわからない。
ただ、例の兄と、この兄と、両方から追い詰められている現状を見て、これじゃ二人でどうにかできるものじゃない、というのを感じた。

やってみるか。
俺は腹をくくった。

「初めまして。七海さんにいつもお世話になってる森川と申します」

営業スマイルをして、相手の懐に飛び込む作戦。
厄介な相手(主に先輩や上司)に実行する。
はたして有効なのか?

「そうなんだ~森川君よろしくね~」

一応、受け入れられてはいる……はず。

「七海さんがそちらに転職すると聞いて。俺も転職を丁度考えていて、そちらに行きたいなーって思ってたんです」

乗ってくるか?

「え、マジで?いいよ~おいで〜」

なんだこのノリのよさ。
こわっ。

「いいんですか……?」

彼女が心配している。

「うん。なんか仕事できそうだし森川君」

なんだその何のあてにもならない直感……。

「本当ですか!?嬉しいです!これからよろしくお願いします」
「うん、宜しくね!森川君~」

突然肩に腕が回ってきた。
距離感……バグってるタイプか。

「じゃあ森川君これから一緒に飲みに行こうよ。いい店あるからさ~」
「はい!ありがとうございます、是非!」

何してるんだ俺。
ここまできたらもう戻れない。
俺の人生どうなるんだ。

まぁ、なんとかなる。
たぶん。

それより。

彼女を見た。

は や く に げ ろ

と伝えた。

乗り込んだ車は高級車。
煙草の煙が蔓延している。

まぁそれには慣れている。

「森川君いくつなの~?」
「三十二です」
「え、俺より年上!?やば。先輩じゃん」
「いえ、そちらの会社に行けば新人みたいなものですから」
「そんなことないよ~すぐにできるようになるから。俺が教えるし色々」

そして車が急に動き出した。

俺の未来を連れて。