【番外編集】三十路の社畜OLが出会った翌日に八才年下男子と結婚した件につきまして

──月曜日

朝から川崎さんとその上司が打ち合わせをしていた。

「すみません、一身上の都合により、退職します」

──は?

「まいったな。君の後任が思いつかない。退職後はどうする?」

「別の企業に行きます」

別の企業?どこだよ。

「今まで無理をさせてすまなかった」

上司が頭を下げている。

「……はい。正直かなりしんどかったです。後任の人はちゃんと配慮してあげてください」

無理していたのはわかっていた。
ただ俺ができることには限度がある。

彼女が選んだ道だ。仕方ない。

廊下で彼女を待ち伏せた。
彼女が俺に気づいて立ち止まる。

「辞めるんだ」

「はい。色々あって」

色々……?

「もしかして……“ 勇凛くん”関係?」

「……あの会社に入らないといけなくなったんです」

あの会社──

「は……?あの会社って林ホールディングス……?」

「はい」

「何があったんだよ」

「私は人質みたいなもんですよ」

人質……?

「意味がわからない」

──沈黙が流れた

「森川さん、色々ありがとうございました」

彼女が頭を下げた。

なんだそれ。

「……結婚の次は退職か」

退職するなら、もうこの実らない関係を断ち切れる。

──と思っているのにもかかわらず、

「連絡先聞くのはアリ?」

まだ未練がある。

彼女が戸惑う。

俺はボールペンを出して、彼女の手の甲に番号を書いた。

「え!?」

「なんかあったらいつでも連絡して」

僅かな望みをかけていた。