並んで歩くなら、あなたと

 夏休みの後半、お盆を過ぎたある日の早朝。

 私はパパと一緒に花市場に顔を出した。

 おじいちゃんが今日は夏休みにすると言って寝ていたから、代わりに私が来たのだ。


「悪いな朝から」


 一通り花を卸して片付けていたら、パパが言った。


「いいよ。パパもどこかで休みなよ。その分、ゆずを働かせよう」

「別に花菜(かな)柚希(ゆずき)も畑のことなんかしなくていいけど」

「する。ゆずは知らないけど、私は花の世話をするのが好きだから」

「そうかよ。今朝の水やりは俺が帰ってからやるから、朝飯食っていこう」


 いつもならママのごはんを食べるけど、今日は柚希が家にいないから、ここで食べていくという。

 その柚希は市場の食堂で、藤乃(ふじの)くんと藤也(とうや)と三人で朝ごはんを食べていた。


「おはよー」

「おはよう、花菜ちゃん、瑞希(みずき)


 今日も藤乃くんはかっこいい。

 丸い眼鏡の向こうでキリッとした目が柔らかく細められていて、それが見られただけで手伝いに来てよかった。

 藤也も同じような顔のはずだけど、見てもなんとも思わない。

 あ、藤也がいるな、くらい。


「よお花菜。宿題終わった?」

「だいたい終わった。あと体育のレポートくらいかな」

「数式何にした?」

「なんにも興味ないって書いた」

「ウケる。それ、あれだろ? 先輩の彼氏」

「なにそれ。そういうふうに書いた人がいたって、世菜(せな)先輩が言ってたけど」

「俺の一個上の先輩の彼氏がそう書いてたんだよ。俺も見せてもらってめっちゃ笑った。花菜のもあとで見せて」

「いいよ」


 ちなみに柚希が藤也と一緒にいたのは、昨日一日ゲームをしていたからだ。

 二人で対戦をするからって、昨日の朝、柚希はパパと市場に行って、そのまま藤乃くんの家の車に乗せてもらったらしい。

 それで今朝も、同じように乗せてもらってきたと。


「花菜ちゃんはこのあとどうする? 藤也と学校に行くなら、一緒に送るよ」


 朝ごはんを終えた藤乃くんが言ったので、パパを見たら頷いた。


「じゃあお願いしようかな」

「悪いな、藤乃。二人して送らせて」

「藤也も送るから大丈夫。気になるなら、ケイトウを半額にしてほしい」

「花菜、藤也、俺が学校まで送る」

「冗談だって」


 藤乃くんはくすくす笑いながら、トレーを片付けに行った。

 私と藤也も一緒に片付ける。


「じゃあ、パパ、行ってきます」

「行ってらっしゃい」


 パパに手を振って、藤乃くんについていく。