並んで歩くなら、あなたと

 なんやかんや手を動かして、気づいたら昼を過ぎていた。


「だー、終わった! 古典と数学のレポート、終わった!」

「お疲れさま。俺も化学と日本史がだいたい書けた」

「お腹空いちゃいました。先輩、お昼どうしますか?」

「適当に食べて帰ろうかと思ってた。花菜ちゃんも一緒に食べませんか?」

「はい!」


 ノートや教科書、借りてきた本をカバンに突っ込んで席を立った。

 自習室を出ようとしたら、先輩に腕を掴まれた。


「手、つないで」

「甘えん坊なんですか?」

「そうだよ。つないで」

「いいですけども」


 先輩の手はエアコンに当たっていたからかひんやりした。

 でも図書館から出たら、暑い!

 駐輪場で自転車にまたがって、お昼を食べに行く。この間はメックに行ったから、今日はソイゼだ。

 先輩はドリアとハンバーグのプレート、私はスパゲッティとサラダ。


「……先輩、意外と食べますよね」

「そう? 男子高校生ならこんなもんじゃない? 友達と行くと、もっと食べてるよ。これにピザとサラダを足したりする」

「女子だと、たぶん私がたくさん食べる方ですよ。あ、デザート頼んでいいですか?」

「いいよ。そういえば、ここでデザート食べたことないや」


 首を傾げる先輩に、デザートのメニューを向けた。


「もったいない! じゃあこのジェラートとプリンのセットにしますから、一緒に食べましょう」

「あーんしてくれる?」

「それ、いつも言ってるんですか?」

「生まれて初めて言った。違うな、保育園のときに、嫌いな野菜を食べさせてもらうときに言ったかも」

「私は保母さんですか」

「ううん、世界一かわいい女の子だと思ってます」


 先輩はいつものようにふにゃっと笑った。

 なんだ、この人。

 甘えてるのはそうなんだろうけど、情けないことを言うかと思えば、私のこと好きなのかな? みたいなことを言ってきて、よく分かんないし面倒な人だ。

 かわいいからって、つい許しちゃうのがダメなのかも。


「先輩、タヌキみたいですよね」

「全部本心です」

「そうじゃなくて、顔が」

「顔!?」

「世菜先輩はタヌキみたいで、かわいいね」

「褒められるかなあ」

「褒めてます。かわいいから、私は大体のことを許せちゃうんです」


 先輩は「どういうことだ?」と困った顔になった。

 罠にかかって動けなくなったタヌキみたいでかわいいから見ていたら、デザートが運ばれてきた。


 昔、藤也のお母さんの花音(かのん)さんも「顔がよければ大体のことは許せるよ。藤乃(ふじの)さんはすぐメソメソするし、無愛想でお客さんとのコミュニケーションに難があるときもあるけど、たぶんあの顔の良さで乗り切ってるときがある」って言っていたし。

 ……だから、先輩を好きな女子が写真を使って遠回しに私にマウントするなんて、間抜けなことされたんだけど。

 まあいいんだ。次やったら、先輩ごと切るか、本人を直接潰すから。


 食べ終わったら解散……って思ったけど、先輩は家まで送ってくれた。


「私、まだレポート残ってるから、また一緒に勉強してもらってもいいですか?」

「いいよ。次はティラミス食べたい」

「わかりました。じゃあまた明日、学校で」


 手を振ったら、先輩はその手にちょっとだけ触れて走っていった。

 ついパパや柚希(ゆずき)に見られていないか、周りを確認してしまった。