並んで歩くなら、あなたと

 夏休みが始まって一週間。最初の日曜日の朝一に、私は世菜(せな)先輩と学校の近くの図書館で待ち合わせていた。


「世菜せんぱーい」


 自転車で図書館に行くと、先輩が駐輪場の入口で待っていた。

 急いで自転車を停める。


「暑いんだから中で待っててくれて良かったのに」

「俺も今来たところだから」


 そう言ってふにゃっと笑う先輩は、私服姿でなんだか新鮮だ。

 紺色の五分袖の前開きのシャツの中に白いシャツ、ボトムは黒いデニムだ。

 似合っているかどうかで言えば、花丸だった。


「……先輩、意外と太いですよね」

「太ってるかな……?」


 先輩はショックそうな顔でお腹をさすった。


「そうではなくて。腕とか脚とか、筋肉あるなーって」

「まあ、毎日土いじりしてるし、自転車で通ってるからね」


 そりゃそうなんだけどさ。

 でも、なんていうか、太くて血管が浮いた腕や、筋張って大きい手とか、いいよね。

 普段は幅が広めのスラックスかジャージだから気づかなかったけど、先輩は太腿も意外と太い。

 それに、私服で並ぶと、思っていたよりも先輩は背が高かった。藤也(とうや)がたしか百八十ちょっと。それよりは低いけど、私より二十センチ近く高くて、そわっとする。


「えっと……私服は制服とはまた違って、悪くないですね、みたいな……」


 いいと思いますとは、恥ずかしくて言えないから誤魔化した。


「もー、暑いから中に入りましょう! 宿題しなきゃ」

「あのさ、暑くて転びそうだから手をつないでもらってもいい?」

「いいですけど、なんですか、その苦しい言い訳」

「言い訳なしに手をつないでって言えないから」


 先輩は情けない顔で私に手を差し出した。

 駐輪場から図書館まで大した距離じゃないし、手は汗でベタベタだけど、それでも先輩がそうしたいなら、私としても(やぶさ)かではないです。全然。

 手を取って図書館の入り口に向かうと、先輩が私を覗きこんだ。


花菜(かな)ちゃんの服もかわいいね。すごく似合ってる」

「そ、そうですか?」

「うん。いつもの制服もかわいいけど、今日もとてもかわいい。もっと上手く褒められたらいいんだけど」


 私は衿付きで袖がひらひらしたシャツに膝上丈のキュロット。無難なキレイめなのは完全にママの趣味だ。

 髪は先輩がくれたお土産に入っていた、ハイビスカス柄のシュシュでまとめていた。


「えっと、大丈夫です。伝わってます」

「そう? 抱えて持って帰って二十四時間かわいがりたいくらいかわいい」

「それはちょっと気持ち悪いです」

「ごめん、本音が隠せなかった」


 本音なのか……。

 突っ込みたかったけど、その前に図書館に着いた。中に入るとエアコンが効いて涼しい!