「赤谷紅子さん。あなたには人間の世界へ行って欲しいのです」
「はい⁉︎」
––––この世界は『人間が住む世界』とは別の世界があるの。それが『色が暮らしている世界』!二つの世界はお互いに刺激を与え合って、別々の世界で自由に暮らしているんだ!
そして、色の世界に過ごす私の名前は、赤谷紅子。赤い髪に赤い瞳がトレンドマークの元気な新高校一年生‼︎
そんな私は、入学早々に黒色をもつ見た目も黒髪黒目の学園長に呼ばれ理解のできないことを言われている。
「あっ、もちろん人間の世界でも学校には通えるから安心してね」
「いえ、私が驚いたのはそう言うことではなくて!なんで急に人間の世界に行けと言っているのですか⁉︎」
「色の世界が崩壊しかけているからかな」
「なっ!説明してくださいよ!」
「うーん。説明が難しいのだけど…」
そう言って学園長はキラキラに光り輝く、黒色の筆を引き出しから取り出した。そうして空中に文字や黒色の人間のようなイラストを描き始めた。
「色は人間達によって影響を受けてるのは知っているよね?」
「はい」
「じゃぁ、もともとある色のイメージが変わってしまった時にはどうなる?」
名前が忘れられる、イメージが変わってしまう、それは、元々持っていた感情を無くしてしまったり、最悪の場合、消えてしまったりする。つまり……。
「私だったら赤という存在が人間達に忘れられてしまいます」
「正解だよ」
その言葉に合わせて、学園長が空中に描いていた黒い色の人間も、だんだんと薄く消えていった。
「色にはたくさんのイメージがある。明るいものから暗いものまでね」
「そうですね」
私たち色が持つイメージ。それは、自分自身を決めるとっても大切なものなの!もともと、多くの人間によって私たちは作られているの。私だったら情熱の赤!とか、そういう明るいイメージが今の私たちの元となっている。
「つい先ほどの色の世界が崩壊しかけているということは、色のイメージや名前が忘れられてしまった色達が大勢いるっていうことですよね?」
「そうだよ。紅子さんたちのようなまじりけのない、最も鮮やかと言われる純色。色と人間、どちらの世界でも重要で影響力があるんだ」
「私たち純色が影響力があることは知っています。って、まさか、ただの1色である私に⁈数多くの色を救えと!?純色の私でも、いくらなんでもそれは……!」
「よくわかってるね!確かめて欲しいんだよ。君に」
今まで以上ににこにことした顔を私に向けてくるくせに、残酷なことを言う学園長。
そんなの私に、人間の世界の海を1日で赤に染めろって事くらい困難な事なのに!
「私でも多くの人間のイメージを取り戻すことは難しいです!」
「大丈夫、大丈夫!」
「本当に無理ですよ⁈」
そう私が言ったら学園長は少し悩んだ様子を見せた。
「いや〜別に君が人間の世界に行かなくたっていいんだよ」
「じゃぁ、じゃぁ!私が行かなくても……」
私の声を遮って、さらに学園長は眉をひそめた。
「入学してもらってそうそう悪いんだけど、君のクラスメイト欠席してて」
「ん?数人だったら影響はないのでは?」
「それがさぁ…紅子さん以外の全員がなんだよね」
「え?一人とか」
「だから、そもそも君に学校生活をさせてあげられないからさぁ〜」
ん?全員欠席?確か私と同じ学園生活をするはずだった色達は、私を入れて24人で色彩環《しきそうかん》と言われていたはず……。と言うことは……。
「え?全員?私以外の23色?」
「そう。イメージの変化とは別に、なぜか君以外の色は全員来ないんだ!あははっ!おかしいねぇ」
「そ、そんなぁ……‼︎笑えることではないですよ!私、やっと学校に通えると思ったのに!」
「そこはさっきも言ったけど、人間界でも学校に入れるように手配しておくから大丈夫!他の色達も大体は人間の世界にはいるんだ!だから、きっと楽しいと思うよ!」
大体人間の世界にいるって言っても……。
私は、赤と一緒にまとめられる暖色(だんしょく)の色達としか仲良くしてなかった。だから、青とかの寒色(かんしょく)の色達と仲良くなれると思って楽しみにしていたのに!
「仮にも純色なんですよね!」
「そうだね。入学する予定の色達はみんな人純色だよ」
「じゃぁ!なんで!1色や2色だけじゃなくて、全員休んでいるんですか!!!」
勢いよく机を叩く。私の熱が上がっている姿に、一瞬たじろいだ。しかし、すぐに元通りの貼り付けた笑顔に戻って私に告げた。
「紅子さんには、その色達が多く暮らしている町の学校に行ってほしい。なぜイメージが、変わってじまったのか……。どうして色相環(しきそうかん)と言われる重要な色達が学校に来ないのか調べてきて欲しいんだ」
本当に!この人は!!今さっきからすごい大丈夫だって言われているいるけど、人間の世界だなんて私、無理だよ!!第一わざわざ人間の世界に行く理由なんてあるの?
「本当に無理なんですよ‼︎」
「大丈夫!じゃぁ、もう準備するね」
先生が机から黒の筆よりも大きい、筆先がよりいっそうキラキラと輝く、白色の大きい筆を取り出した。そうして、空中に何かを描き始めた。
「え?本当に私は行かないといけないのですか?」
「うん。だってこのままだと"赤"を持つ君達まで変わってしまうよ?」
「それでも、順序というものがありますよね⁈」
「大丈夫、大丈夫!本当に、人間の世界の学校にもたくさんの色が生活してるから!元々人間界に住む色も多いしさ!校外研修だと思って行っておいで」
「私たち生徒がいなくなった学園はどうなるんですか?」
「まぁ、君たちが入学するって決まるまで何百年も時間が経ってたんだ。たった数年そこらでは心配いらないよ」
そう私の質問に答えながら、学園長は空中に大きな白色の扉が完成させた。そして、立体になった扉を開けて中を確認している。
「うん、誰もいなさそうだね!じゃぁ、いってらっしゃい!」
背中を押される。とっさのことで対抗することもできない。
「えっ?待って、まだ!」
「あっ、そうそう!紅子さんが色だって人間たちにバレないようにしてね〜!!」
「今、大事なこと言います⁉︎」
まばゆい光が私を包みこむ。あぁ私本当に人間の世界へ行くんだ……。
「……あの子達を助けてあげてね。情熱とそして愛情を持つ赤の君が…」
光が収まっていく。押されたはずの私はしっかりと地面に足をつけていた。しかし、あたりは真っ暗で自分がどこにいるのかもわからない。
目がしょぼしょぼする。確か、理由があったような……?急に暗いところから明るいところに行くと瞳孔が小さくなって、目がしょぼしょぼする…だっけ?
昔すぎて、あまり覚えていないや。あってるのかもわかんないしね。というか……。
「学園長急すぎ!私、まだあの色に言いたいことがあったのに!!」
目が光になれて辺りが鮮明に見えるようになった。周りにはたくさんの色で溢れている。
「綺麗…人間の世界ってこんなに綺麗なところなの?色の世界とは違って複雑な色がいっぱいだなぁ」
「色?」
「そう、人間の世界は色で溢れてとても綺麗…って!誰⁉︎」
声がした方を向くと黒色の髪と目を持った男の子が座っていた。学園長が確認してたはずなのに…!
色だってバレないようにしないと!どうしよう、どうしたらいいの!
「僕は黒野四保。君は?」
黒野白くん?名前に二つも色が入っているなんて……。
「わ、私は赤谷紅子。名前に黒や白が入っているってことは白くんも色なの?」
「え?今さっきも言っていたけれど色って何?」
「そ、それは…」
私のバカー!!自分から言わないって決めたのについ話してしまった。本当に困ったぞ……。
「……大丈夫。頭おかしいやつだなんて思っていないから」
「そ、それはそれで…なんかぁ。うーん…。あぁ〜!上手に説明ができない!!」
「ふふっ紅子ちゃんは面白いね」
「まぁね!私は明るい元気な赤だから!」
「紅子ちゃんは赤色なの?」
開き直ろう!隠したっていい事ないし!うん!学園長だって、私が完璧に隠せると思って人間の世界に行かせた訳ではないはず!
そう自分にいい聞かせる。
「そうだよ!ほら見て赤い目と赤い髪がトレンドマークの…」
「どうしたの?」
自分の髪の色を見てみる…。見事に綺麗な白色をしていた。この調子だと目も白色だろう。
待って私赤色じゃなくなってる?嘘、私赤色じゃないの?
「ねぇ、白くん私何色に見える?」
「え、えーっと……。ピンク?いや、白だと思うよ」
「だよね⁉︎まって、どうしよう!」
「白だとだめなの?」
「私、消えちゃうかも!」
「え?赤色から白色になると紅子さんは消えちゃうの?」
とても驚いているようだ。そりゃそうだろう。急に現れた人が「消えます!」なんて。
「まだ、わからないけど……。髪と目の色で私たちは消えるか消えないか判断するから。でも、こんな急に変わるなんてこと聞いたことないの!何が起こっているの?本当にどうしよう‼︎」
人間の世界に来た影響?それとも、本当に赤のイメージが変わってしまった?なんとかして私の赤を取り戻さないと!
「赤色を探す?でもそんな簡単に見つかる?」
あぁ〜!!本当にどうしよう!!
ぶつぶつと声を出して、焦っている私をみて心配してなのかハンカチを差し伸べてくれた。ありがたく受け取らせてもらう。
「ありがとう」
「ねぇ、紅子ちゃんそれって赤だったらなんでもいいの?」
「うん。少しでも別の色が混ざってなければいいんだけど、人間の世界ではそれが難しいって聞いたよ!」
少し考えた様子で、白くんは。
「確かに明確には赤って感じじゃないかもしれないけど…ついてきてほしい」
赤がある場所がそう簡単にあるの?いや、何もしないより行動‼︎ついて行ってみよう!
*・*・*
白くんが連れてきてくれた場所は、たくさんの絵が飾っているお家だった。
絵を描く時に使う、紙を固定するイーゼルに立てられているひまわりの絵が目に留まる。
ひまわりと言えば黄色だけど赤や紫、青など普段は使わないような色で描かれている。飾っていないってことはまだ描いている途中なのかな?
白くんは先に何かを探している。そんな時に話しかけるのは迷惑かな?いや、でもこのひまわりの絵について話したい!
「このひまわりすごい力強くてかっこいいね!」
「本当?色である紅子ちゃんに言われると嬉しいよ。描いていてよかった」
「え?これ白くんが描いたの?」
「うん…まだまだ下手なんだけどね」
「えぇ…!こんなにすごい絵なのに⁈人間の世界って評価が厳しいね」
「そうだね…あった!」
白くんは筆や、なにも入っていなさそうな箱があるごちゃごちゃしたところから何かを見つけ出したみたいだ。
「ほら、これ」
「え!赤色?」
白くんが私に見せてくれたものは絵の具の赤色だった。
そんなすぐに赤色が見つかるだなんて。
「絵の具でも良いんだよね?」
「うん。私はもともと色だから大丈夫だと思う」
「よかった、でもこの絵の具でどうするの?」
「えーっと、直接髪にぬる?」
「紅子ちゃんもわかってないんだね」
「あはは…だってここ最近は色が消えるなんてなかったし」
「それは笑い事じゃないね」
「まぁまぁ…」
数年前までは色が消えかけるなんて、過去の起こり得ない出来事だって言われていた。だから、今私が消えかけている?のかもしれない状況は異例の出来事なのだ。
「とりあえず、赤色を髪につけるね」
「え?直接大丈夫なの?」
「うん!多分いける!白くんも手伝って」
「うーん……。わかった」
白くんが筆で私の髪の毛を白から赤に染めていく。なんか、この筆で塗られている感覚がとても心地いい。だんだん染められていく気持ちよさに、身を任せる。
「これでどうかな?ムラとかないようにしたんだけど」
「うん!いいよ!絵の具ってすごいね!私の元々持っている赤色とほぼ一緒だよ‼︎これで私も消えないと思う!」
「そう、よかった」
白くんもほっとしたみたいだ。あの塗られている心地いい時間が終わってしまったのは残念だけれど、まぁ、また頼もうっと!
「改めてこれが私、赤谷紅子の本当の姿だよ!よろしくね!白くん!」
「うん、よろしく。それと、多分勘違いしてると思うんだけど、僕の名前は色じゃなくて数字の四と保護の保で四保なんだ」
「え!白色の白じゃないの?」
「そうだね」
「じゃ苗字の黒野も色じゃない?」
「それは、色で合ってるよ」
えーっと、じゃぁ黒野白じゃなくて正しくは黒野四保ってことだよね。
呼び方が同じだと口頭では判別が難しい!
「わかった!四保くんね!覚えた!」
「うん。僕も紅子さんのこと覚えたよ」
「そっか!」
「そういえば、まだちゃんと聞けてなかったけど、紅子ちゃんはなんで色の世界からこっちの世界にきたの?」
「それは、色の世界が崩壊しないようにしに来たの」
「崩壊?」
「話が長くなるんだけど、」
色達のイメージや名前が忘れられていることによって私達色に危機が迫っていることを伝えた。そして、私が危機を救うために人間界に来たことも全て話した。
「そっか、色も人間と一緒に暮らしているんだね。でも、どうしてわざわざ人間の世界に?」
「そうなの!私も理由がわからないし、どうしたらいいのかもわからないの」
また、悩んだ表情で地面を見る四保くん。少しの沈黙が過ぎた後、覚悟を決めた顔をして私を見つめて…。
「じゃぁ、それ僕も手伝う」
「え?本当⁈でも、クラスメイトだけでも23色はいるよ?色の世界にいる色もいるけど、それでもいいの?」
「今聞いた話だと、多分学校にそれらしい人?いや、色達心当たりがあるよ」
「学校!」
そういえば、私も学校に通うとか言っていたなぁ。
「学校に行かないと!学校ってどこにあるの?」
「待って、今日はまだ長期休みなんだ。ちょうど明日入学式があるからその時に探そう」
「そうなの?こっちの世界でも入学式があるんだ〜。ってことは、明日学校に行けばいいのかな?あれ?でも、私制服とかないし」
「紅子ちゃんが来ている服」
「この服のこと?」
言われるまで気づかなかったけど、服もこっちの世界に合わせて変わっているみたいだ。元々来ていた黒色のセーラー服とは反対に白色のセーラー服に大きな赤いリボンがとっても可愛い。
「それ、うちの学校の制服なんだ」
「そうなの⁉︎じゃぁ、私明日から通えるのかな?」
「紅子ちゃん受験してないよね?」
「受験って何?」
「その学校に入りたい人たちがテストって言う、学力のある試験を受けることかな?それに合格すると晴れてその学校に通うことができるんだ」
「そうなんだね」
色の世界では、学校への入学は黒い封筒の招待状が届く。ここも、人間の世界とは違うことだなぁ……。
「とりあえず明日にならないとわからないね」
「結局明日か…」
まぁ、初日から上手に行くわけでもないし。
「よし!明日頑張るぞ!じゃぁまたね!」
勢いよく部屋から出て走り出そうとしたところに、四保くんがために入る。
「まって、紅子ちゃん帰る家あるの?」
「はっ!ない!」
忘れてた……。家どころか服もこれ以外ない。あれもこれも、全部学園長が急に私を人間の世界に送ったからだ!
「紅子ちゃんがよければだけど、この家に泊まる?」
「え?いいの?ここって四保くんの家なの?」
「うん。実はかなり前だけど僕が描いた作品がいい成績を取って、その時に安く買わせてもらったものなんだ」
「それは、すごね!!」
絵で家を買えるだなんてどれだけすごい絵を描いたんだろ?すごい気になる!もっと仲良くなったら見せてもらえるのかな?
「ふふっありがとう。高校生になって一人暮らしを始めたんだけど、2階の部屋は何も使っていないところがあるから。嫌じゃなければだけど…」
「全然嫌じゃないよ!むしろ四保くんに頼りすぎていて私これ以上迷惑じゃないかな?」
「それは、大丈夫。僕がしたいと思ったから」
四保くん……!いい人すぎるよ!
「じゃぁ、お願いします!」
「うん。よろしく」
「よろしく‼︎」
––––そうして、私と四保くんの色づいた話が幕を開けた!
「はい⁉︎」
––––この世界は『人間が住む世界』とは別の世界があるの。それが『色が暮らしている世界』!二つの世界はお互いに刺激を与え合って、別々の世界で自由に暮らしているんだ!
そして、色の世界に過ごす私の名前は、赤谷紅子。赤い髪に赤い瞳がトレンドマークの元気な新高校一年生‼︎
そんな私は、入学早々に黒色をもつ見た目も黒髪黒目の学園長に呼ばれ理解のできないことを言われている。
「あっ、もちろん人間の世界でも学校には通えるから安心してね」
「いえ、私が驚いたのはそう言うことではなくて!なんで急に人間の世界に行けと言っているのですか⁉︎」
「色の世界が崩壊しかけているからかな」
「なっ!説明してくださいよ!」
「うーん。説明が難しいのだけど…」
そう言って学園長はキラキラに光り輝く、黒色の筆を引き出しから取り出した。そうして空中に文字や黒色の人間のようなイラストを描き始めた。
「色は人間達によって影響を受けてるのは知っているよね?」
「はい」
「じゃぁ、もともとある色のイメージが変わってしまった時にはどうなる?」
名前が忘れられる、イメージが変わってしまう、それは、元々持っていた感情を無くしてしまったり、最悪の場合、消えてしまったりする。つまり……。
「私だったら赤という存在が人間達に忘れられてしまいます」
「正解だよ」
その言葉に合わせて、学園長が空中に描いていた黒い色の人間も、だんだんと薄く消えていった。
「色にはたくさんのイメージがある。明るいものから暗いものまでね」
「そうですね」
私たち色が持つイメージ。それは、自分自身を決めるとっても大切なものなの!もともと、多くの人間によって私たちは作られているの。私だったら情熱の赤!とか、そういう明るいイメージが今の私たちの元となっている。
「つい先ほどの色の世界が崩壊しかけているということは、色のイメージや名前が忘れられてしまった色達が大勢いるっていうことですよね?」
「そうだよ。紅子さんたちのようなまじりけのない、最も鮮やかと言われる純色。色と人間、どちらの世界でも重要で影響力があるんだ」
「私たち純色が影響力があることは知っています。って、まさか、ただの1色である私に⁈数多くの色を救えと!?純色の私でも、いくらなんでもそれは……!」
「よくわかってるね!確かめて欲しいんだよ。君に」
今まで以上ににこにことした顔を私に向けてくるくせに、残酷なことを言う学園長。
そんなの私に、人間の世界の海を1日で赤に染めろって事くらい困難な事なのに!
「私でも多くの人間のイメージを取り戻すことは難しいです!」
「大丈夫、大丈夫!」
「本当に無理ですよ⁈」
そう私が言ったら学園長は少し悩んだ様子を見せた。
「いや〜別に君が人間の世界に行かなくたっていいんだよ」
「じゃぁ、じゃぁ!私が行かなくても……」
私の声を遮って、さらに学園長は眉をひそめた。
「入学してもらってそうそう悪いんだけど、君のクラスメイト欠席してて」
「ん?数人だったら影響はないのでは?」
「それがさぁ…紅子さん以外の全員がなんだよね」
「え?一人とか」
「だから、そもそも君に学校生活をさせてあげられないからさぁ〜」
ん?全員欠席?確か私と同じ学園生活をするはずだった色達は、私を入れて24人で色彩環《しきそうかん》と言われていたはず……。と言うことは……。
「え?全員?私以外の23色?」
「そう。イメージの変化とは別に、なぜか君以外の色は全員来ないんだ!あははっ!おかしいねぇ」
「そ、そんなぁ……‼︎笑えることではないですよ!私、やっと学校に通えると思ったのに!」
「そこはさっきも言ったけど、人間界でも学校に入れるように手配しておくから大丈夫!他の色達も大体は人間の世界にはいるんだ!だから、きっと楽しいと思うよ!」
大体人間の世界にいるって言っても……。
私は、赤と一緒にまとめられる暖色(だんしょく)の色達としか仲良くしてなかった。だから、青とかの寒色(かんしょく)の色達と仲良くなれると思って楽しみにしていたのに!
「仮にも純色なんですよね!」
「そうだね。入学する予定の色達はみんな人純色だよ」
「じゃぁ!なんで!1色や2色だけじゃなくて、全員休んでいるんですか!!!」
勢いよく机を叩く。私の熱が上がっている姿に、一瞬たじろいだ。しかし、すぐに元通りの貼り付けた笑顔に戻って私に告げた。
「紅子さんには、その色達が多く暮らしている町の学校に行ってほしい。なぜイメージが、変わってじまったのか……。どうして色相環(しきそうかん)と言われる重要な色達が学校に来ないのか調べてきて欲しいんだ」
本当に!この人は!!今さっきからすごい大丈夫だって言われているいるけど、人間の世界だなんて私、無理だよ!!第一わざわざ人間の世界に行く理由なんてあるの?
「本当に無理なんですよ‼︎」
「大丈夫!じゃぁ、もう準備するね」
先生が机から黒の筆よりも大きい、筆先がよりいっそうキラキラと輝く、白色の大きい筆を取り出した。そうして、空中に何かを描き始めた。
「え?本当に私は行かないといけないのですか?」
「うん。だってこのままだと"赤"を持つ君達まで変わってしまうよ?」
「それでも、順序というものがありますよね⁈」
「大丈夫、大丈夫!本当に、人間の世界の学校にもたくさんの色が生活してるから!元々人間界に住む色も多いしさ!校外研修だと思って行っておいで」
「私たち生徒がいなくなった学園はどうなるんですか?」
「まぁ、君たちが入学するって決まるまで何百年も時間が経ってたんだ。たった数年そこらでは心配いらないよ」
そう私の質問に答えながら、学園長は空中に大きな白色の扉が完成させた。そして、立体になった扉を開けて中を確認している。
「うん、誰もいなさそうだね!じゃぁ、いってらっしゃい!」
背中を押される。とっさのことで対抗することもできない。
「えっ?待って、まだ!」
「あっ、そうそう!紅子さんが色だって人間たちにバレないようにしてね〜!!」
「今、大事なこと言います⁉︎」
まばゆい光が私を包みこむ。あぁ私本当に人間の世界へ行くんだ……。
「……あの子達を助けてあげてね。情熱とそして愛情を持つ赤の君が…」
光が収まっていく。押されたはずの私はしっかりと地面に足をつけていた。しかし、あたりは真っ暗で自分がどこにいるのかもわからない。
目がしょぼしょぼする。確か、理由があったような……?急に暗いところから明るいところに行くと瞳孔が小さくなって、目がしょぼしょぼする…だっけ?
昔すぎて、あまり覚えていないや。あってるのかもわかんないしね。というか……。
「学園長急すぎ!私、まだあの色に言いたいことがあったのに!!」
目が光になれて辺りが鮮明に見えるようになった。周りにはたくさんの色で溢れている。
「綺麗…人間の世界ってこんなに綺麗なところなの?色の世界とは違って複雑な色がいっぱいだなぁ」
「色?」
「そう、人間の世界は色で溢れてとても綺麗…って!誰⁉︎」
声がした方を向くと黒色の髪と目を持った男の子が座っていた。学園長が確認してたはずなのに…!
色だってバレないようにしないと!どうしよう、どうしたらいいの!
「僕は黒野四保。君は?」
黒野白くん?名前に二つも色が入っているなんて……。
「わ、私は赤谷紅子。名前に黒や白が入っているってことは白くんも色なの?」
「え?今さっきも言っていたけれど色って何?」
「そ、それは…」
私のバカー!!自分から言わないって決めたのについ話してしまった。本当に困ったぞ……。
「……大丈夫。頭おかしいやつだなんて思っていないから」
「そ、それはそれで…なんかぁ。うーん…。あぁ〜!上手に説明ができない!!」
「ふふっ紅子ちゃんは面白いね」
「まぁね!私は明るい元気な赤だから!」
「紅子ちゃんは赤色なの?」
開き直ろう!隠したっていい事ないし!うん!学園長だって、私が完璧に隠せると思って人間の世界に行かせた訳ではないはず!
そう自分にいい聞かせる。
「そうだよ!ほら見て赤い目と赤い髪がトレンドマークの…」
「どうしたの?」
自分の髪の色を見てみる…。見事に綺麗な白色をしていた。この調子だと目も白色だろう。
待って私赤色じゃなくなってる?嘘、私赤色じゃないの?
「ねぇ、白くん私何色に見える?」
「え、えーっと……。ピンク?いや、白だと思うよ」
「だよね⁉︎まって、どうしよう!」
「白だとだめなの?」
「私、消えちゃうかも!」
「え?赤色から白色になると紅子さんは消えちゃうの?」
とても驚いているようだ。そりゃそうだろう。急に現れた人が「消えます!」なんて。
「まだ、わからないけど……。髪と目の色で私たちは消えるか消えないか判断するから。でも、こんな急に変わるなんてこと聞いたことないの!何が起こっているの?本当にどうしよう‼︎」
人間の世界に来た影響?それとも、本当に赤のイメージが変わってしまった?なんとかして私の赤を取り戻さないと!
「赤色を探す?でもそんな簡単に見つかる?」
あぁ〜!!本当にどうしよう!!
ぶつぶつと声を出して、焦っている私をみて心配してなのかハンカチを差し伸べてくれた。ありがたく受け取らせてもらう。
「ありがとう」
「ねぇ、紅子ちゃんそれって赤だったらなんでもいいの?」
「うん。少しでも別の色が混ざってなければいいんだけど、人間の世界ではそれが難しいって聞いたよ!」
少し考えた様子で、白くんは。
「確かに明確には赤って感じじゃないかもしれないけど…ついてきてほしい」
赤がある場所がそう簡単にあるの?いや、何もしないより行動‼︎ついて行ってみよう!
*・*・*
白くんが連れてきてくれた場所は、たくさんの絵が飾っているお家だった。
絵を描く時に使う、紙を固定するイーゼルに立てられているひまわりの絵が目に留まる。
ひまわりと言えば黄色だけど赤や紫、青など普段は使わないような色で描かれている。飾っていないってことはまだ描いている途中なのかな?
白くんは先に何かを探している。そんな時に話しかけるのは迷惑かな?いや、でもこのひまわりの絵について話したい!
「このひまわりすごい力強くてかっこいいね!」
「本当?色である紅子ちゃんに言われると嬉しいよ。描いていてよかった」
「え?これ白くんが描いたの?」
「うん…まだまだ下手なんだけどね」
「えぇ…!こんなにすごい絵なのに⁈人間の世界って評価が厳しいね」
「そうだね…あった!」
白くんは筆や、なにも入っていなさそうな箱があるごちゃごちゃしたところから何かを見つけ出したみたいだ。
「ほら、これ」
「え!赤色?」
白くんが私に見せてくれたものは絵の具の赤色だった。
そんなすぐに赤色が見つかるだなんて。
「絵の具でも良いんだよね?」
「うん。私はもともと色だから大丈夫だと思う」
「よかった、でもこの絵の具でどうするの?」
「えーっと、直接髪にぬる?」
「紅子ちゃんもわかってないんだね」
「あはは…だってここ最近は色が消えるなんてなかったし」
「それは笑い事じゃないね」
「まぁまぁ…」
数年前までは色が消えかけるなんて、過去の起こり得ない出来事だって言われていた。だから、今私が消えかけている?のかもしれない状況は異例の出来事なのだ。
「とりあえず、赤色を髪につけるね」
「え?直接大丈夫なの?」
「うん!多分いける!白くんも手伝って」
「うーん……。わかった」
白くんが筆で私の髪の毛を白から赤に染めていく。なんか、この筆で塗られている感覚がとても心地いい。だんだん染められていく気持ちよさに、身を任せる。
「これでどうかな?ムラとかないようにしたんだけど」
「うん!いいよ!絵の具ってすごいね!私の元々持っている赤色とほぼ一緒だよ‼︎これで私も消えないと思う!」
「そう、よかった」
白くんもほっとしたみたいだ。あの塗られている心地いい時間が終わってしまったのは残念だけれど、まぁ、また頼もうっと!
「改めてこれが私、赤谷紅子の本当の姿だよ!よろしくね!白くん!」
「うん、よろしく。それと、多分勘違いしてると思うんだけど、僕の名前は色じゃなくて数字の四と保護の保で四保なんだ」
「え!白色の白じゃないの?」
「そうだね」
「じゃ苗字の黒野も色じゃない?」
「それは、色で合ってるよ」
えーっと、じゃぁ黒野白じゃなくて正しくは黒野四保ってことだよね。
呼び方が同じだと口頭では判別が難しい!
「わかった!四保くんね!覚えた!」
「うん。僕も紅子さんのこと覚えたよ」
「そっか!」
「そういえば、まだちゃんと聞けてなかったけど、紅子ちゃんはなんで色の世界からこっちの世界にきたの?」
「それは、色の世界が崩壊しないようにしに来たの」
「崩壊?」
「話が長くなるんだけど、」
色達のイメージや名前が忘れられていることによって私達色に危機が迫っていることを伝えた。そして、私が危機を救うために人間界に来たことも全て話した。
「そっか、色も人間と一緒に暮らしているんだね。でも、どうしてわざわざ人間の世界に?」
「そうなの!私も理由がわからないし、どうしたらいいのかもわからないの」
また、悩んだ表情で地面を見る四保くん。少しの沈黙が過ぎた後、覚悟を決めた顔をして私を見つめて…。
「じゃぁ、それ僕も手伝う」
「え?本当⁈でも、クラスメイトだけでも23色はいるよ?色の世界にいる色もいるけど、それでもいいの?」
「今聞いた話だと、多分学校にそれらしい人?いや、色達心当たりがあるよ」
「学校!」
そういえば、私も学校に通うとか言っていたなぁ。
「学校に行かないと!学校ってどこにあるの?」
「待って、今日はまだ長期休みなんだ。ちょうど明日入学式があるからその時に探そう」
「そうなの?こっちの世界でも入学式があるんだ〜。ってことは、明日学校に行けばいいのかな?あれ?でも、私制服とかないし」
「紅子ちゃんが来ている服」
「この服のこと?」
言われるまで気づかなかったけど、服もこっちの世界に合わせて変わっているみたいだ。元々来ていた黒色のセーラー服とは反対に白色のセーラー服に大きな赤いリボンがとっても可愛い。
「それ、うちの学校の制服なんだ」
「そうなの⁉︎じゃぁ、私明日から通えるのかな?」
「紅子ちゃん受験してないよね?」
「受験って何?」
「その学校に入りたい人たちがテストって言う、学力のある試験を受けることかな?それに合格すると晴れてその学校に通うことができるんだ」
「そうなんだね」
色の世界では、学校への入学は黒い封筒の招待状が届く。ここも、人間の世界とは違うことだなぁ……。
「とりあえず明日にならないとわからないね」
「結局明日か…」
まぁ、初日から上手に行くわけでもないし。
「よし!明日頑張るぞ!じゃぁまたね!」
勢いよく部屋から出て走り出そうとしたところに、四保くんがために入る。
「まって、紅子ちゃん帰る家あるの?」
「はっ!ない!」
忘れてた……。家どころか服もこれ以外ない。あれもこれも、全部学園長が急に私を人間の世界に送ったからだ!
「紅子ちゃんがよければだけど、この家に泊まる?」
「え?いいの?ここって四保くんの家なの?」
「うん。実はかなり前だけど僕が描いた作品がいい成績を取って、その時に安く買わせてもらったものなんだ」
「それは、すごね!!」
絵で家を買えるだなんてどれだけすごい絵を描いたんだろ?すごい気になる!もっと仲良くなったら見せてもらえるのかな?
「ふふっありがとう。高校生になって一人暮らしを始めたんだけど、2階の部屋は何も使っていないところがあるから。嫌じゃなければだけど…」
「全然嫌じゃないよ!むしろ四保くんに頼りすぎていて私これ以上迷惑じゃないかな?」
「それは、大丈夫。僕がしたいと思ったから」
四保くん……!いい人すぎるよ!
「じゃぁ、お願いします!」
「うん。よろしく」
「よろしく‼︎」
––––そうして、私と四保くんの色づいた話が幕を開けた!


