「速報です。島尾(しまお)県天睦(てん)市豊町一丁目にて連続殺人事件が起きました。被害者は男子高校生、加害者は女子高校生とのことです。加害者の供述によりますと、『好きだったから殺した。』とのことで、警察の調査では加害者と被害者の間に関連性はなかった、ということです。それでは、次のニュースです。」
朝のニュースで、そんな速報が流れた。
「世の中物騒になったわねえ。」
「紅音と同じぐらいの歳なのに、おかしな子もいるもんなんだなあ、紅音、気をつけろよ。」
「そうだよね、動機が意味分からないよ、私はしないよー。」
私、紫吹 紅音(しぶき あかね)、衝撃的なニュースが朝ご飯の席での話題で持ちきりになっていた。
「あっそろそろ学校行かなきゃ!行ってきまーす。」
「いってらっしゃーい。」
「くれぐれも気をつけるんだぞー。」
お父さんは心配性だなあ、私は人を殺したりなんてしないのに。
好きな人のことを殺すなんて、あの女の子はどう思っていたの?
好きな人がいるなら告ったらいいじゃん。
「紅音、おはよー!」
「あっ蒼!おはよ!」
この子は友達の波止場 蒼(はとば あおい)。
「ねえ紅音、朝のニュース、見た?」
「見た見たー、好きな人のこと殺すなんて意味分かんないよね⁉︎」
「そうだよねー、率直に好きだって伝えればいいのにね。」
今日の授業ではそんなニュースがあったからか青少年が非行に走ってしまわないように、という授業が急遽入った。
事件が起きたのは他府県だったし女の子はもう逮捕されているから別にもう何もないと思うんだけど、両親は過保護だし先生も……。
みんなだって「うちらはそんなことしないしー。」とかぶつくさ言っててきっとみんなも授業は上の空。
私たちには全く関係のないことだから。
「蒼ー、今日はいつもより時間が経つのがとても長く感じたよー……。」
「長すぎだったね、授業の度に先生たちは同じことばっかり言うし。耳にたこができちゃうよ。」
「おお紅音無事に帰って来たか!」
「別に何もないってー。」
ピコン。
メッセージ?
蒼からだ!
「ごめん紅音、熱が出たから明日学校休むね。」
「そっか、お大事にね。」
メッセージを送り返して、寝た。
チュンチュンチュン……
蒼のいない学校なんてつまんないな。
私も別に学校行きたくない。
「ねえお母さーん、しんどいから学校休んでもいいー?」
仮病だ。
「ちょっと熱測ってみなさい。」
そんな都合よく熱は出てくれない。
だからあらかじめストーブで体温計を温めておいた。
お母さんに体温計を渡す。
「42度⁉︎こんな熱出るわけないじゃない、学校行きなさい!」
「どうして!」
「あなた皆勤賞目指してるのに初めて『休みたい。』て言ったから不思議に思ったのと、顔色いいわよ?」
くっ、過去の言動で墓穴を掘ってしまった……。
「いいよ、行ったらいいんでしょ!」
クリームパンを咥えて鞄を担ぎ、家を飛び出した。
別に遅刻しそうなほど時間ギリギリな訳じゃないけどこのやるせなさを紛らわすために全力で走る。
曲がり角が見えてきた。
もうすぐ学校に着く、蒼のいない学校なんて憂鬱なだけだけど……。
ドンッ!
顔を上げると容姿端麗な男の子。
「大丈夫?」
急いでクリームパンを飲み込む。
彼にはぶつかった拍子に飛び散ってしまったクリームがべったりついている。
やばっ、同じ学校の……しかも先輩じゃん!
「ごめんなさい、先輩こそ大丈夫ですか⁉︎」
「僕は大丈夫、今日は体育があって体操服を持っているからね。」
「そんな、……申し訳ないです……。」
「それじゃあ、気にしないで?」
「あっ……はい……。」
何あの神対応!
普通走ってぶつかってきた後輩にベチャベチャにされたら気分悪くなるよね?
なのに私のことを優先して心配してくれて……!
先をいく先輩の背中に目がいく。
先輩が時折女の子と喋っていると……胸がざわつく。
この気持ちは憧れじゃない……恋?
休憩時間に先輩を見かけた。
「あ、あの!」
「あ、朝の子じゃん!」
「本っ当にすみませんでした!責任持って制服洗ってきます!」
「そんな、大丈夫だよ。」
「いえっ、示しがつかないのでやらせてください!」
「あっ、……ああ。」
これで話しかけるきっかけができた!
「名前なんて言うんですか?」
「山吹 伊織(やまぶき いおり)。君は?」
「紫吹 紅音です!」
「そっか、またね紅音。」
「紅音」って呼ばれたー!
昼休憩になると昼食すらおろそかにして近くの川へ先輩の制服を洗いに行き、急いで学校に戻り、丁度お天気だったからベランダの手すりに干していたら放課後には乾いていた。
靴箱を確認すると、まだ先輩は校内にいたから制服を渡しに行った。
「制服洗って乾いたので返しに来ました!」
「わあ、ありがとう。そんな……明日で良かったのに、いつの間に?」
「昼休憩に近くの川で洗ってそこから干してました!」
「こんなに早くしてくれてありがとう!」
「いえいえ!」
家に帰ると、お母さんとお父さんが少し怖い顔で仁王立ちしていた。
「紅音、お母さんとお父さんに何か言うことあるでしょう、言いなさい。」
「えっ、朝は仮病しようとしてた、ごめんなさい。」
「「え?」」
「そうじゃないでしょう。」
「え?」
「今日は学校から電話が来たんだ。昼休憩に紅音が一人で校外へ行ったって。」
「そうだけど……それがどうしたの?」
「紅音の通う学校では休憩中でも校外に出てはいけないんだ。」
「はーい。」
「じゃあこの話はもう終わり、今回はちっちゃなことだったけどくれぐれも犯罪に手を染めるなよ。」
「お父さん大袈裟!」
ピコン。
蒼からメッセージだ。
「明日は学校行けそう!一緒に行こうね!」
「うん、楽しみにしてるね!」
明日蒼に会えると思うと明日が待ち遠しい。
伊織先輩のことも報告しよう。
鏡を見ると知らぬ間に口元が綻んでいた。
「おはよう蒼!」
「おはよう紅音、昨日は休んじゃってごめんね。」
「寂しかったよー。」
「紅音可哀想にー、よしよしー!」
「実は、ビッグニュースがあるんだよ!」
「なになに?」
「私、好きな人ができましたー!」
「えーっ⁉︎誰誰?」
「山吹 伊織先輩!」
「伊織先輩⁉︎あの人自己主張強いって噂あるからやめといた方がいいと思うよ?」
「確かにちょっと意見を押し通すところはあったかもしれないけど、親切にしてくれたし、そういうところもまとめて好きなんだよ。」
「そうなんだったら……いいんじゃない……?」
ずっと仲の良い蒼と初めてギクシャクしてしまった。
どうやったら直るのか分からないけど、きっといつかもとに戻るよね。
初めて恋愛の相談したのに先に否定してきたのは蒼のほうなんだし。
蒼と喋らない一日は味気なかった。
あれ、どうして蒼と伊織先輩が並んで歩いてるの?
二人とも笑顔で仲睦まじそうだし……。
次の日の朝。
「おはよ。」
「……おはよ。」
「ねえ昨日の放課後さ、蒼と伊織先輩が仲良さそうに並んで歩いてたの見たんだけど、私昨日『伊織先輩のことが好き。』って相談したよね?」
「私伊織先輩と一緒の委員会だよ?別に並んで歩いててもおかしくないよね?」
「そうかもしれないけど……私はそれを見て胸が痛かったんだよ。」
「私別に伊織先輩と付き合ってないし紅音だって付き合ってないよね?伊織先輩は誰のものでもないよ?もちろん紅音のものじゃないんだよ?」
「ふーん、蒼はそう言うんだね?じゃあ、もういいよ。」
私は歩幅を早めて蒼から遠ざかった。
去り際にちらっと視界に入った蒼は唇を噛み締めて苦しそうな表情だったのはきっと私の見間違いだろう。
私も上を向いていないと視界がぼやけてくるのはきっと気のせいだ。
大体、私は蒼に「伊織先輩のことが好き。」と相談したのに、蒼は喜んでくれたり、応援してくれたことはなかった。
ましてや私が伊織先輩のことを好きだと知った上で紛らわしい行動をし、会話をしてもつっけんどんなことしか言ってこない。
全部蒼が悪いんだ。
もう伊織先輩を蒼の思うがままにさせたくない。
すると、伊織先輩が通りかかった。
「伊織先輩。」
「紅音じゃないか、涙なんか流してたら可愛い顔が台無しだよ?」
「放課後、体育館裏に来てもらえますか。」
「いいけど……どうしたの?」
「お楽しみです。」
それから急いで学校を早退して、家に帰った。
家で、何か使えるものがないか探す。
そして、薄いピンク色の水鉄砲を見つけた。
私が幼かった頃、家族で川に遊びに行った時に使ったものだ。
マッチも持ってきて、火をつけ冷やして丸く丸めて鉛筆の芯を混ぜて、それを水鉄砲に入れる。
今日の放課後になれば、私が生まれてきてから築き上げてきた全てのものが壊れる。
そんなことなどもう分かっている。
お母さんやお父さんにまで見放されるかもしれない。
それでも構わない。
約束の放課後がやってきた。
どこかの教室のカーテンがなびく。
「来てくれたんですね。」
「ああ。」
後ろ手に水鉄砲を隠している。
「本当に、クリームパンを咥えて走っててぶつかって先輩にクリームぶちまけちゃってごめんなさい。」
「そんなこと全然気にしてないよ?」
先輩に一歩歩み寄る。
「私としては最期にお礼を言っておきたかったんです。」
「『最後』に?まだ学校で会えるだろ?」
先輩の背中に手を回し、先輩の眉間に銃口を突きつける。
「伊織先輩、ごめんなさい。あと、」
大きく息を吸う。
「ありがとうございました!」
パンッ。
満面の笑みで最後は言った。
崩れ落ちた伊織先輩の体を受け止め、強く抱きしめる。
これで良かったんだよ。
だんだん冷たくなっていく伊織先輩を抱きながら、そう思った。
「速報です。江中府琉市にて殺人事件が起きました。犯人は紫吹 紅音さん、被害者は山吹 伊織さん。紫吹さんの供述によりますと、『伊織先輩を誰の好き勝手にはさせない。』とのことです。」
「えっ紅音ニュースになってるじゃん!ギクシャクしてずに話せてたらこんなことは起きなかったのかな。」
「蒼、何か言った?」
「お母さん?何も言ってないよ?」
朝のニュースで、そんな速報が流れた。
「世の中物騒になったわねえ。」
「紅音と同じぐらいの歳なのに、おかしな子もいるもんなんだなあ、紅音、気をつけろよ。」
「そうだよね、動機が意味分からないよ、私はしないよー。」
私、紫吹 紅音(しぶき あかね)、衝撃的なニュースが朝ご飯の席での話題で持ちきりになっていた。
「あっそろそろ学校行かなきゃ!行ってきまーす。」
「いってらっしゃーい。」
「くれぐれも気をつけるんだぞー。」
お父さんは心配性だなあ、私は人を殺したりなんてしないのに。
好きな人のことを殺すなんて、あの女の子はどう思っていたの?
好きな人がいるなら告ったらいいじゃん。
「紅音、おはよー!」
「あっ蒼!おはよ!」
この子は友達の波止場 蒼(はとば あおい)。
「ねえ紅音、朝のニュース、見た?」
「見た見たー、好きな人のこと殺すなんて意味分かんないよね⁉︎」
「そうだよねー、率直に好きだって伝えればいいのにね。」
今日の授業ではそんなニュースがあったからか青少年が非行に走ってしまわないように、という授業が急遽入った。
事件が起きたのは他府県だったし女の子はもう逮捕されているから別にもう何もないと思うんだけど、両親は過保護だし先生も……。
みんなだって「うちらはそんなことしないしー。」とかぶつくさ言っててきっとみんなも授業は上の空。
私たちには全く関係のないことだから。
「蒼ー、今日はいつもより時間が経つのがとても長く感じたよー……。」
「長すぎだったね、授業の度に先生たちは同じことばっかり言うし。耳にたこができちゃうよ。」
「おお紅音無事に帰って来たか!」
「別に何もないってー。」
ピコン。
メッセージ?
蒼からだ!
「ごめん紅音、熱が出たから明日学校休むね。」
「そっか、お大事にね。」
メッセージを送り返して、寝た。
チュンチュンチュン……
蒼のいない学校なんてつまんないな。
私も別に学校行きたくない。
「ねえお母さーん、しんどいから学校休んでもいいー?」
仮病だ。
「ちょっと熱測ってみなさい。」
そんな都合よく熱は出てくれない。
だからあらかじめストーブで体温計を温めておいた。
お母さんに体温計を渡す。
「42度⁉︎こんな熱出るわけないじゃない、学校行きなさい!」
「どうして!」
「あなた皆勤賞目指してるのに初めて『休みたい。』て言ったから不思議に思ったのと、顔色いいわよ?」
くっ、過去の言動で墓穴を掘ってしまった……。
「いいよ、行ったらいいんでしょ!」
クリームパンを咥えて鞄を担ぎ、家を飛び出した。
別に遅刻しそうなほど時間ギリギリな訳じゃないけどこのやるせなさを紛らわすために全力で走る。
曲がり角が見えてきた。
もうすぐ学校に着く、蒼のいない学校なんて憂鬱なだけだけど……。
ドンッ!
顔を上げると容姿端麗な男の子。
「大丈夫?」
急いでクリームパンを飲み込む。
彼にはぶつかった拍子に飛び散ってしまったクリームがべったりついている。
やばっ、同じ学校の……しかも先輩じゃん!
「ごめんなさい、先輩こそ大丈夫ですか⁉︎」
「僕は大丈夫、今日は体育があって体操服を持っているからね。」
「そんな、……申し訳ないです……。」
「それじゃあ、気にしないで?」
「あっ……はい……。」
何あの神対応!
普通走ってぶつかってきた後輩にベチャベチャにされたら気分悪くなるよね?
なのに私のことを優先して心配してくれて……!
先をいく先輩の背中に目がいく。
先輩が時折女の子と喋っていると……胸がざわつく。
この気持ちは憧れじゃない……恋?
休憩時間に先輩を見かけた。
「あ、あの!」
「あ、朝の子じゃん!」
「本っ当にすみませんでした!責任持って制服洗ってきます!」
「そんな、大丈夫だよ。」
「いえっ、示しがつかないのでやらせてください!」
「あっ、……ああ。」
これで話しかけるきっかけができた!
「名前なんて言うんですか?」
「山吹 伊織(やまぶき いおり)。君は?」
「紫吹 紅音です!」
「そっか、またね紅音。」
「紅音」って呼ばれたー!
昼休憩になると昼食すらおろそかにして近くの川へ先輩の制服を洗いに行き、急いで学校に戻り、丁度お天気だったからベランダの手すりに干していたら放課後には乾いていた。
靴箱を確認すると、まだ先輩は校内にいたから制服を渡しに行った。
「制服洗って乾いたので返しに来ました!」
「わあ、ありがとう。そんな……明日で良かったのに、いつの間に?」
「昼休憩に近くの川で洗ってそこから干してました!」
「こんなに早くしてくれてありがとう!」
「いえいえ!」
家に帰ると、お母さんとお父さんが少し怖い顔で仁王立ちしていた。
「紅音、お母さんとお父さんに何か言うことあるでしょう、言いなさい。」
「えっ、朝は仮病しようとしてた、ごめんなさい。」
「「え?」」
「そうじゃないでしょう。」
「え?」
「今日は学校から電話が来たんだ。昼休憩に紅音が一人で校外へ行ったって。」
「そうだけど……それがどうしたの?」
「紅音の通う学校では休憩中でも校外に出てはいけないんだ。」
「はーい。」
「じゃあこの話はもう終わり、今回はちっちゃなことだったけどくれぐれも犯罪に手を染めるなよ。」
「お父さん大袈裟!」
ピコン。
蒼からメッセージだ。
「明日は学校行けそう!一緒に行こうね!」
「うん、楽しみにしてるね!」
明日蒼に会えると思うと明日が待ち遠しい。
伊織先輩のことも報告しよう。
鏡を見ると知らぬ間に口元が綻んでいた。
「おはよう蒼!」
「おはよう紅音、昨日は休んじゃってごめんね。」
「寂しかったよー。」
「紅音可哀想にー、よしよしー!」
「実は、ビッグニュースがあるんだよ!」
「なになに?」
「私、好きな人ができましたー!」
「えーっ⁉︎誰誰?」
「山吹 伊織先輩!」
「伊織先輩⁉︎あの人自己主張強いって噂あるからやめといた方がいいと思うよ?」
「確かにちょっと意見を押し通すところはあったかもしれないけど、親切にしてくれたし、そういうところもまとめて好きなんだよ。」
「そうなんだったら……いいんじゃない……?」
ずっと仲の良い蒼と初めてギクシャクしてしまった。
どうやったら直るのか分からないけど、きっといつかもとに戻るよね。
初めて恋愛の相談したのに先に否定してきたのは蒼のほうなんだし。
蒼と喋らない一日は味気なかった。
あれ、どうして蒼と伊織先輩が並んで歩いてるの?
二人とも笑顔で仲睦まじそうだし……。
次の日の朝。
「おはよ。」
「……おはよ。」
「ねえ昨日の放課後さ、蒼と伊織先輩が仲良さそうに並んで歩いてたの見たんだけど、私昨日『伊織先輩のことが好き。』って相談したよね?」
「私伊織先輩と一緒の委員会だよ?別に並んで歩いててもおかしくないよね?」
「そうかもしれないけど……私はそれを見て胸が痛かったんだよ。」
「私別に伊織先輩と付き合ってないし紅音だって付き合ってないよね?伊織先輩は誰のものでもないよ?もちろん紅音のものじゃないんだよ?」
「ふーん、蒼はそう言うんだね?じゃあ、もういいよ。」
私は歩幅を早めて蒼から遠ざかった。
去り際にちらっと視界に入った蒼は唇を噛み締めて苦しそうな表情だったのはきっと私の見間違いだろう。
私も上を向いていないと視界がぼやけてくるのはきっと気のせいだ。
大体、私は蒼に「伊織先輩のことが好き。」と相談したのに、蒼は喜んでくれたり、応援してくれたことはなかった。
ましてや私が伊織先輩のことを好きだと知った上で紛らわしい行動をし、会話をしてもつっけんどんなことしか言ってこない。
全部蒼が悪いんだ。
もう伊織先輩を蒼の思うがままにさせたくない。
すると、伊織先輩が通りかかった。
「伊織先輩。」
「紅音じゃないか、涙なんか流してたら可愛い顔が台無しだよ?」
「放課後、体育館裏に来てもらえますか。」
「いいけど……どうしたの?」
「お楽しみです。」
それから急いで学校を早退して、家に帰った。
家で、何か使えるものがないか探す。
そして、薄いピンク色の水鉄砲を見つけた。
私が幼かった頃、家族で川に遊びに行った時に使ったものだ。
マッチも持ってきて、火をつけ冷やして丸く丸めて鉛筆の芯を混ぜて、それを水鉄砲に入れる。
今日の放課後になれば、私が生まれてきてから築き上げてきた全てのものが壊れる。
そんなことなどもう分かっている。
お母さんやお父さんにまで見放されるかもしれない。
それでも構わない。
約束の放課後がやってきた。
どこかの教室のカーテンがなびく。
「来てくれたんですね。」
「ああ。」
後ろ手に水鉄砲を隠している。
「本当に、クリームパンを咥えて走っててぶつかって先輩にクリームぶちまけちゃってごめんなさい。」
「そんなこと全然気にしてないよ?」
先輩に一歩歩み寄る。
「私としては最期にお礼を言っておきたかったんです。」
「『最後』に?まだ学校で会えるだろ?」
先輩の背中に手を回し、先輩の眉間に銃口を突きつける。
「伊織先輩、ごめんなさい。あと、」
大きく息を吸う。
「ありがとうございました!」
パンッ。
満面の笑みで最後は言った。
崩れ落ちた伊織先輩の体を受け止め、強く抱きしめる。
これで良かったんだよ。
だんだん冷たくなっていく伊織先輩を抱きながら、そう思った。
「速報です。江中府琉市にて殺人事件が起きました。犯人は紫吹 紅音さん、被害者は山吹 伊織さん。紫吹さんの供述によりますと、『伊織先輩を誰の好き勝手にはさせない。』とのことです。」
「えっ紅音ニュースになってるじゃん!ギクシャクしてずに話せてたらこんなことは起きなかったのかな。」
「蒼、何か言った?」
「お母さん?何も言ってないよ?」



