追放令嬢が可愛い犬を拾ったら実は狼の神獣でした〜なぜか気に入られて国を滅ぼしそうな勢いです〜

 どうしたいかと片手を差し出しながらイリオに尋ねられたエリスは、イリオをただジッと見つめていた。淡い紫色の髪の毛が風にふわりと靡き、ローズピンクの瞳は戸惑うように揺れている。

(もう、こっちの世界には戻れない。戻れなくても私はいいのかな、イリオと一緒に神獣の住む世界で私は生きていけるのかな)

 あちらの世界がどんな世界なのかもわからない。ただ、イリオの口調だとエリスが快適に過ごせる場所ということはなんとなくわかる。

(こっちにいたところで、そもそも私には居場所が無かった。私が私でいられるのは、イリオの側でだけ)

 こちらに残って、ファシウスと結婚しこの国の王女として生きていくという選択肢だってある。だが、それを考えるとなぜか胸のなかにもやもやしたものが浮かび上がり、ファシウスの笑顔を思い出しただけで気持ちが悪くなる。どうしてそうなってしまうのかはわからないが、恐らくファシウスのことを信用していないからだろう。

 なによりも、この国はイリオのことを殺そうとしたのだ。きっと、ファシウスだって同じだろう。そんな国に、そんな世界にいて果たして自分は幸せなのだろうかと疑問になる。

(私は、もう決めていたんだもの。決めていたからこそ、ここまでイリオと一緒に歩いてきた)