追放令嬢が可愛い犬を拾ったら実は狼の神獣でした〜なぜか気に入られて国を滅ぼしそうな勢いです〜

 レイヴンは腕を組み、ふふん、と鼻で笑う。だが、レイヴンの言葉は兵士たちの耳には全く入っていないようで、兵士たちはただただ喚きバタバタとのたうち回っている。

「ええい、撤退!撤退だ!引け!ひけええええ」

 兵士の一人がそう言ってその場から逃げようと走り出すと、他の兵士たちも皆一斉に走り出す。その後をカラスたちは飛びながら追いかけていった。

「ふん、弱すぎる。あれでよくもまぁイリオ様を殺そうなどと思ったものだ」

 レイヴンはそう吐き捨てると、空を見て目を細めた。艶やかな黒髪は風に靡き、太陽の光を反射して青や紫色に美しく変化している。

「あの方はどこまでもお強く、どこまでもお優しい方だ。またこうしてあの方のために働けることを誇りに思おう。今度こそ絶対に、あの方を守って見せる」





 それは、エリスがイリオと出会うよりも何百年も前。当時まだただのカラスだったレイヴンは、森の中でボロボロな姿で地面に横たわっていた。

 たまたま、オオタカに狙われた仲間を助けようとして逆に自分が狙われてしまい、なんとか逃げることはできたものの、瀕死の傷を負って森の中に落ちたのだ。

(全く、俺様としたことがこんなところで死ぬ羽目になるとはね)