追放令嬢が可愛い犬を拾ったら実は狼の神獣でした〜なぜか気に入られて国を滅ぼしそうな勢いです〜

 動揺して視線をあちこちに泳がせているエリスを見て、ファシウスは優しく微笑んで口を開く。

「そこで君に提案なんだけれど、今度は君が僕の婚約者になってくれないかな」
「……え?」

 突然この人はなにを言っているのだろうか。意味が分からずエリスは目をぱちくりさせ、イリオは顔を顰める。

「はは、驚くよね。ごめんごめん。実は君について少し調べさせてもらったんだ。君はご実家であまりいい扱いを受けていないようだ。娘なのに娘ではないような、まるで侍女のような扱いを受けている。僕のせいで君は追放されたけれど、追放先の方が君は幸せだったんじゃないかな?」

 ファシウスの言葉に、エリスは目を大きく見開く。それを見て、ファシウスは小さく微笑んだ。

「君は自由の身になってもむしろ辛い生活に戻るだけだ。僕は申し訳なく思っているんだよ。だから、罪滅ぼしの意味も込めて、この機会に君を僕の婚約者にしようと思うんだ」
「それは……そんなことがまかり通るのですか?そもそも私は伯爵家の娘です。第一王子とつり合いが取れるとは思いませんし、そもそも婚約者になれる器ではありません」

 そもそも、こうして面と向かって会話をすること自体、珍しいことなのだ。

「そんなの関係ないよ、僕は第一王子だ。僕の一声で君を婚約者にすることなんて簡単にできる。もちろん、君には婚約者として王家での立ち振る舞いやマナー、この国の歴史について勉強してもらうことになるけど、君ならできると信じてるよ」
「そ、そんな……」

 確かに、第一王子の命はこの国では絶対だろう。その一声で、エリスを婚約者にすることは可能だ。むしろ、この時点でエリスにも拒否権はないと言っても過言ではない。突然すぎることにエリスは絶句してしまう。