一滴ポーション、俺クマちゃん!?

「おいくらですか?このお人形」

え!?

まさかの質問に小森家族は3人揃って目を丸くした。

「私、ぬいぐるみ大好きで気に入ったの見つけるとすぐ買っちゃうんですよ〜。ご無理なご相談で申し訳ないんですが、このネコちゃん、是非 買わせていただけませんかっ!?」

ちょっ…ちょっと待って!それは さすがに……!

「あっ、あ〜、ごめんなさ〜い!それ売れないのよ〜…」

「そこを何とかお願いしますっ!!お金なら出しますから!!」

「って言われてもねぇ…」

「私このネコちゃんに一目惚れしちゃったんですっ!これは間違いなく運命です!私、このネコちゃんに“ジジ”って名前付けて毎日可愛がりますから、お願いします〜!!」

ジジって、俺は黒猫じゃないぞ!いや待てよ、でも香坂さん美人だし、一緒に暮らしたら毎日 香坂さんの あんな姿やこんな姿を間近で見れ………って そんな馬鹿な事 考える場合じゃないっ!大ピンチだっ!!

「す、すまねぇな香坂ちゃん、そのぬいぐるみは響も気に入ってるやつだから どうしたって売る事 出来ねんだぁ。その代わり、ジジそっくりな黒猫パンを今度作ってやっから今回はそれでぬいぐるみの事は諦めてくんないか?」

厨房から出て来た父さんがそう言っても香坂さんは頑なに引こうとはしなかった。

「私、本気でこのぬいぐるみが欲しいんです!お願いしますっ!お願いしますっ!」

「やだっ、香坂ちゃん、頭なんか下げないでちょうだ〜い!貴方、どうしよう!?」

「どうしようったって…まぁ別に今は男が嫁さん家に婿入りするなんて よくある話しだしなぁ…」

何言ってんだ、父さん!?そんな事 言ってる場合じゃ…

「このぬいぐるみが欲しいんです〜!!」

「駄目ったら駄目だってば〜!!」

香坂さんと母さんに引っ張られてるせいで いよいよ生地が破けて綿が飛び出しそうだ。

「ぬおぉ〜〜〜っ!!痛ぁ〜〜〜いっ!!」 

叩かれたり床に落とされたり、雑に扱われる ぬいぐるみ って いっつもこんな気持ちだったんだな。自分がぬいぐるみになって初めて知って涙が出てきた。