一滴ポーション、俺クマちゃん!?

厨房に居ると粉まみれになったり、コンロの火や油で焼けそうになったりして“危ないから”ではなく“役に立たないから”って、俺は両親にレジ横に飾られてしまった。

何度も言うが座らせられたんじゃなくて、母さんがフェルトでちゃちゃっと作ったコック帽を被され 小さいクッキーを持たされて パン屋のマスコットキャラクターのように“飾られた”のだ。

あ〜、くそっ…あのアホ夫婦めっ!後でボッコボコに……って、やば…!背中 痒くなってきた…!でもお客さん居るから動けない〜っ…!!

「まいどおおきに〜!あっ、香坂《こうさか》ちゃんっ おはよう!って、あら、今朝はいつもより早いわね?」

香坂さんは、うちの近所のアパートに住んでる美容師のお姉さん(29歳)の事だ。大のパン好きで、毎朝 出勤前に うちの店でパンを買ってってくれる うちの大事な常連さんの1人。

「おはようございま〜す!今日、ちょっと予約が結構入ってて…、だから早めに職場に行かなきゃならなくて」

「あらそうなの?忙しくて大変ねぇ…。でも、お客さんが沢山来てくれるのは良い事よ」

「えぇ本当に、お陰様で。…今日のおすすめのパンって何ですか?」

「今日はねぇ……あんぱんがおすすめよ!

「じゃあ それ下さい。あと、くるみ入りあんぱんと、うぐいすあんぱんをひとつずつ!」

「まいど〜!全部で750円になりま〜す!今、袋に詰めるわね!」

「ありがとうございま〜す♪ ええっと、750円、750円っと……」

このパン屋あんぱんしか無ぇのか?

財布から小銭を出していた香坂さんがレジ横に置かれた 俺《もふもふネコぬいぐるみ》に気付いて あっ! と言った。

「え〜っ、可愛い〜!!なにこのぬいぐるみ〜!?今まで無かったですよね?この子どうしたんですか?」

「あぁ、それ?うちの響がクレーンゲームで取って来たのよ〜!」

「へぇ、そんだったんですね!よく見たら なんかちょっと表情が響くんに似てるかも…」

本人ですからな。