「あ、栄助!」
「やっと来たか、今日は遅かったじゃん」
甘太郎と樹がぼくに気づく。
ぼくは「ちょっと部屋を片づけてて…」と言いながら2人の元へ向かった。
「それより、今さっき足元にこんなのが落ちてきたんだけど…」
拾ったばかりの豆入りの小袋を見せると、甘太郎がニカッと歯を見せて笑った。
「おぉ!今ちょうど樹と、1対1でアレやっててさ」
「アレ?」
ぼくが首をかしげると、2人が声を合わせて言った。
『豆まき!』
「2月3日はもう終わってるんだけど…」
ぼくの言葉に、樹が説明をする。
「甘太郎がさ、今年家で豆まくの忘れてたらしくて。それでここで俺たちと豆まきやりたくなったんだと」
「家にある豆がこれしかなくてさ~、でもぶつけてもあんまり痛くねぇし、そこは良かったかも?」
そう言って甘太郎が、手にしていた豆菓子の袋を開いた。
「ほら、これなら地面に落としてもこうして食えるし。樹と栄助も食うか?うまいぞ!」
『食べる』
そう言って樹と2人、袋の中の豆へと手を伸ばす。
つまんだ豆を口内でポリポリしながら、ぼくは一の姿を探した。
辺りには気配が感じられないから、テントにいるか…そもそもまだ来ていないのかもしれない。
「一も今日、遅くなってるの?」
ぼくが聞くと、甘太郎が「いいや」と首を振った。
「一はジャンケンで負けたから、買い出しに行ってもらってる」
「え、買い出しって___」
そう言いかけたとき、獣道から足音がした。



