「うーん、1個多かったな」
樹が、ポツンと残ったシャベルを見て呟いた。
彼としては甘太郎の分も考えて4個のシャベルを持ってきたんだろうけど…。
その甘太郎が自分で用意していたから、1個あまってしまうのは仕方のない事だ。
「………」
ふと、一があまったシャベルを見つめているのに気づき声をかける。
「一、どうかしたか?」
「あ、いえ…ちょっといいですか?」
『?』
ぼくたちがキョトンとしていると、一が指をパチンと鳴らした。
久しぶりに見た気がする、この光景。
…あれ、待てよ。
一が指を鳴らしたという事は___。
「お呼びでしょうか、坊ちゃん」
少し離れた木の陰から飛び出してきた伊草さんが、こちらに向かって走ってくる。
…前に甘太郎も言っていたけど、こうしてみると確かに逃○中のハンターだな。
雪の中をものともせずやって来た伊草さんに、一がシャベルを手渡した。
「今から甘太郎くんの指示でかまくらを作ります。伊草、あなたも手伝ってください」
「承知いたしました」
「とんでもない助っ人が加入したんだけど」
伊草さんがシャベルを持ち、ぼくらがそれを見てパチパチと拍手する。
…これは作業する仲間が増えた事への歓迎の拍手であり、けして“楽できるぞ、やったぁ”というよこしまな思いは含まれていない。
もちろんぼくたちも頑張るつもりである。
「それじゃ、かまくら作り始めるぞ!まずは雪を一カ所に集めてくれ!」
甘太郎の号令を受け、ぼくらは作業を始めた。



