「これ甘七の…妹が持ってたぬいぐるみだ」
「えっ、妹さんのですか?」
一とぼくが目を丸くする。
甘太郎は頭をガシガシとかき、困ったように言った。
「あいつ…やっぱり秘密基地までついて来てたんだな」
「やっぱり…って事は、思い当たる節があるって事?」
ぼくが聞くと甘太郎は頷き、両腕を組む。
「何度か勝手に途中までついて来てた事があってさ…気づくたびに家まで連れて帰ってたんだけど、ここまで来てたのかぁ…」
甘太郎がもう一度頭をかき、ぼくらに頭を下げた。
「悪い!もう秘密基地には来ちゃダメだって言っておくからさ…そのぬいぐるみもオレが今日持って帰っとく」
そう言って一の持つぬいぐるみに手を伸ばす甘太郎。
ぼくはポツリと呟いた。
「…いいんじゃない?別にここに置いといても」
「えっ…いいのか?」
キョトンとした甘太郎の手がぬいぐるみから離れていく。
ぼくはそれを見て笑った。
「まぁ、1人でこんなとこまで来るのは危ないけど…妹ちゃんがここまで来たって証拠は残しておいてもいいと思うな」
お兄ちゃんの目を盗んで秘密基地に到着したとき、妹ちゃんはどんな気持ちだっただろう。
…きっと兄を出し抜けたと嬉しかったんじゃないだろうか。
登山家が山頂でハタを立てるように、そんな気持ちで妹ちゃんもこのぬいぐるみをテントに置いていったんだとすれば、かわいらしいと思う。



