「テントの中はだいぶキレイになったし、ちょっと2人の方を見に行こう。そのぬいぐるみの持ち主が分かるかもしれないし」
「そうですね」
一がぬいぐるみを丁寧に持ち直す。
テントから出て靴を履く。
そしてそこから最初に見えた人物に声をかけた。
「樹、ちょっといい?」
「おう、どうした?」
座面の木材を見ていた樹がこちらを振り返った。
どうやらブランコから無事に取り外せたらしい。
「樹くん、このぬいぐるみに見覚えはありませんか?」
一がウサギのぬいぐるみを樹に向ける。
「ぬいぐるみ?」
呟いて、じぃっとぬいぐるみを見る樹が、ふと視線を上に移動させた。
しばらく何か考えるようにそうしていたけど「いや…知らないな」と首を左右に振り、答える。
「そうか…なら甘太郎のかな…」
「たぶん、聞けば分かるんじゃねぇかな」
『?』
“知らない”と言っていたのに、樹の様子を見ていると何か理由を知っていそうだった。
でも、それを話さないという事は何かワケがあるんだろう。
それなら深く追及する事もないか…。
こういうのを無理に聞き出すのも何か違うし。
「そうか、分かった。じゃあ邪魔して悪かったな___」
そう言って甘太郎の元へ向かおうとするぼくを、樹が止めた。
「栄助ストップ。ちょい待ち」
「は?」
足を止めて樹を見る。
彼は手に木材を持ってニコリと笑っていた。



