「あれ、甘太郎はまだ来てないの?」
10月、すっかり秋の装いになった裏山の秘密基地。
テントの入り口を開けるといつも真っ先に到着しているはずの甘太郎の姿がなかった。
「もしかしたらお家のお手伝いで遅くなっているのかもですね」
読書をしていた一が、ページをめくる指を止めながらそう言う。
ぼくは「そっか」とと呟いて一が読んでいる本に視線を向けた。
“不良伝説~中学生で暴れ馬と呼ばれた男たち~”というタイトルがものすごく気になって仕方ない。
…とりあえず後で没収しておこう。
ぼくが目をそらした先、熱心に何かの作業をしている樹がいた。
「それ…カボチャか?」
横からのぞいてみると、顔ぐらいの大きさがある緑のカボチャが床に置かれていた。
その表面は今まさに、樹の手に握られた彫刻刀でガリガリと削られている。
ふとぼくの気配に気づいたのか、動きを止めた樹と目が合った。
「あぁ、栄助か。そう、カボチャな。もうすぐハロウィンだから、ランタンでも作ろうかなって」
「へぇ…いいな、それ。…でもケガするなよ」
「分かってるって」
そう言うと樹は再び作業に戻っていった。
ぼくはテントの中、空いたスペースに座る。



