「いえ、僕そんなこと一言も言ってませんね」
「樹のやつウソを方便に使いやがった」
セッティングを終えてウキウキとした足取りで茂みに隠れる伊草さんを見て、一がそっと頭を抱えた。
「で、これってどうやって結べばいいんだ?普通に固結びでいいん?」
ロープを指先でつつきながら甘太郎が聞く。
「それじゃ少し不安だからちゃんとした結び方でやる。ここら辺は俺がやるから、3人は下で脚立を押さえといてくれ」
「おう、分かった!固定は任せたぜ」
束ねたロープを肩に担ぎ、樹が脚立を登っていく。
その姿を下から見守りつつ、脚立が動かないように押さえるぼくたち。
内心、少しだけ緊張していた。
樹のことだから心配ないとは思うけれど、高所での作業だからとどうしてもドキドキしてしまう。
「ゆ、ゆっくりでいいからな…落ちるなよ…!」
「それは“落ちろ”っていうフリ?」
「んなわけあるか!お前落ちたらはっ倒すからな!!」
「ウケる、追い打ちかけてくんじゃん」
ケラケラと頭上で樹が笑う。
全く…こっちは本気で心配してるっていうのに。
…だけど軽口を言える余裕があるなら、まぁ大丈夫なのか___。
ぼくがそう思った瞬間、樹の動きがピタリと止まる。



