「栄助くん、樹くんがモテてると知ってからショックで上の空でしたもんね…」
だって…去年まで樹が女子からチョコ受け取ってるの見た事なかったし。
ぼくと同じで女子からチョコをもらえない、さみしいバレンタイン男子だって思っていたから…。
いや、それは今どうでもいい。
「え、甘太郎がチョコをもらってたって本当?」
ぼくの言葉に樹が頷いた。
チラリと甘太郎を見る。
「ふぅ…やっと食い終わった!」
口元の食べカスを舌でペロリとなめ取って甘太郎が笑う。
「食べ終わったなら聞かせてくれ。…バレンタインに女子からチョコもらったって、何で?」
「栄助くん、目が怖いです」
「よほど悔しいんだろうな」
一と樹の言葉を無視して、ぼくは甘太郎を見続けた。
「え…何でって、味見をしてくれって頼まれたからだけど…」
そう言われ、ぼくは首をかしげる。
「え?味見…って、バレンタインの当日に?」
そういうのって前日とか…当日以外にやってもらうんじゃ…。
ぼくの疑問に甘太郎がアッサリと答える。
「何か中学のバレンタインに備えて、予行練習したかったらしい。オレが選ばれたのはケーキ屋の息子だからだって言われた」
『…あ~…?』
ぼくたちがそれぞれ困惑気味な声を上げる。
理由を聞いたのに納得したような、してないような…不思議な気分だ。
その“予行練習”って中学に入ってからじゃダメなんだろうか。
女の子って分からないや。



