モネは風を感じていた。
今日は天気が良く、窓ガラスが全部開け放たれた学校の廊下は輝かしく明るく、気持ちが良い。
モネは魔法について漠然としたイメージを考えていた。
────もし世界から魔法がなくなったら。
白いアーチのある裏庭には薔薇が咲いている。
波模様のアーチにくねった花が蔦を絡めて、庭一面に小さな花が咲いて、日差しの下の庭園は美しい。
小鳥が一羽飛んできて、白いアーチのてっぺんに止まった。
モネが花畑にしゃがむと、足音がして校舎の向こうの方からカナトが歩いてきた。
「ここに居た」
カナトがモネを見下ろした。
「学校へ残って花の世話をするより、僕の家へ来て呪文の復習でもしたら?。お前はいつも呪文を間違えるんだから。初歩の呪文なんか、間違えたらみっともないだろ。」
「だって」
花畑に座り込んだモネの前に、カナトもしゃがみ込んで、青空を見上げた。
「学校にはもう慣れた?。お前が家に居て学校に行かないって粘るから、ほとほと手を焼いたの、まだ覚えてる。来てみたら何ともなかっただろ?」
「うん」
「クラスメートと仲良くやって良い子にしてたら、僕がうちでご褒美を用意してやるよ。商店街の評判のケーキか、専門店のチョコレートを買ってやる。学校に行かないなんて、もう考えないで済むように。」
「ありがとう。」
カナトは手元に咲いていた花を自分側に引き寄せた。
「モネ。」
カナトは呼ぶと、花を千切って、手を伸ばしてモネの耳の横に差した。
「お前と一緒に学校へ来れるのが嬉しい。屋敷でするパーティや振る舞われる贈り物やなんか、全部引き換えにしても、お前と一緒の方が良い。」
額に静かに落とされたキスに、ふわり、と風が吹く。
午後の日差しが静かに照っている。


