乃々と貸し別荘の話






 昼間の間明るく照っていた陽はすっかり落ちて、辺りの景色が青く暗くなってきていた。

 屋台を照らす明かりが光り出して、人々の喋り声が賑やかに響いている。


 りんご飴屋を通り過ぎる。
 たこ焼き屋を通り過ぎる。
 ラムネ屋の屋台も通り過ぎた。


 通りを歩いていると、ふいに、向かい側から来る人混みに、乃々が隠れて見えなくなった。


 それは大人の家族連れで、道の真ん中を何やらがやがや話しながら歩いていて、背の小さい乃々に全然気づいて居なかったらしい。


 乃々はぶつかりそうになった後、立ち止まってしまい、蒼空と恭からはぐれた。




 ─────待って。

 と思う間もなかった。




 すぐに道を戻って来た蒼空が、乃々に追いつくと、乃々の右手を掴んだ。


 向かい側から人が歩いてきたが、乃々は蒼空に引っ張られたのでぶつからなかった。


 後ろから左手を掴まれたので、乃々は振り返った。


「離せ」


 蒼空が恭を睨んだ。


「無理」


 恭が言った。




「離せよ」

「絶対無理」



 2人に手を引かれて祭りの夜を歩きながら、乃々は、自分はこの思い出をずっと忘れないだろう、と心の中で思った。