夕方になるまで、乃々と蒼空と恭は卓球台のロビーに居た。
恭と乃々は卓球をせず、藤のソファに座って壁打ちをする蒼空を眺めていた。
「インスピレーションって言葉から、何を想像する?」
乃々の隣に並んで座って、恭が聞いた。
「僕は何かきらきらしたものを考えるんだけど。」
「インスピレーション?」
蒼空の打つ卓球の球を目で追いながら、乃々が聞いた。
「音楽かな。どうして?」
「ママがよく話題にする事なんだ。多分身近にももっとあるけど、特別な感じ。」
恭が言った。
「綺麗な話題じゃない?。黒沢さんが何を考えるか知りたくて。黒沢さんに似合う話題だと思って、わざと聞いてるよ。」
乃々は、蒼空くんと恭くんで卓球をしたら白熱してきっと楽しいのにに、と思っていたが、2人は一緒に遊ぼうとはしなかった。
蒼空はこの線引きを大事な問題だと考えていたし、恭も蒼空をかなり邪魔にしていて、壁打ちにしか使われない卓球台はどっちも意地っ張りだという事の良い証拠になっていた。
「恭くん、今日のお祭りで何を買う?」
乃々が聞いた。
「かき氷かな。」
恭が言った。
「お祭りは楽しいけど、そんなに欲しいものは売ってない気がする。かき氷は好きだけど。」
「そっか。私も食べ物かなあ。りんご飴とか。」
乃々がお祭りを想像してうっとりしていると、恭が笑った。
「楽しみだね。」
仲よさげに喋っている乃々と恭を、卓球台の蒼空がチラリと見たが、何にも言わなかった。


