昼食を食べ終えて乃々がダイニングから部屋に戻ると、母親が乃々の浴衣をベッドルームに干しているところだった。
「今日のお祭りは子供達だけで行っても危なくはないわね」
窓際で浴衣のホコリを叩きながら、母親が言った。
「蒼空くんちのママと、恭くんちのママと、浴衣持って来ようって話だったのよ。坂の下の通りのお祭り、結構賑やかみたい。夕方からみんなで行って来るといいわ。」
乃々は、自分の髪の色が映える緑の浴衣を物珍し気に眺めた。
浴衣というものは、どうしてこんな不思議な形をしているのだろう。
「お祭りで金魚掬いやって良い?」
干された浴衣を触りながら乃々が聞いた。
「金魚は駄目。家に持って帰れないでしょ」
オレンジの兵児帯を一緒に干しながら、母親が言った。
「どうしても駄目?」
乃々が母親に駆け寄った。
「生き物以外にしなさい。お小遣いあげるから。たまには楽しいでしょ。」
母親は兵児帯のホコリをはたきながら、気をつけて行ってきなさいね、と言った。


