午前中から暑かったが、蒼空と乃々は庭へ出た。
2人はハンモックで話す約束をしていた。
木陰伝いに歩いて行って、別荘から一番端にあるハンモックに乃々が座ると、枝がちょっと軋んで、緑の葉がさらさらと揺れた。
別荘を後ろに蒼空が言った。
「お前が他の奴に心を移す事を考えてみた。」
乃々は首を傾げた。
「お前が他の奴を好きになって、全部そいつの物になるって。」
乃々はカラフルな布に凭れて空を見上げた。
下から見ると、緑の葉は重なり合って光にきらきら輝いている。
蒼空の伸ばしたてのひらの先が、軽く、乃々の唇に触れた。
「何とか言いな。ないって言え。ねえ。」
蒼空が言った。
「約束。お前は僕以外好きにならない。」
夏空を行く風が吹いて、揺れた葉の隙間からきらめきが乃々の体へ零れ落ちる。
蒼空を見返す乃々の澄んだ目は子供の目。
蒼空はしかめっ面で、乃々の頬をつまんで親指で押した。
蒼空は、別荘で出逢った、この同じ年の女の子の事をとても気に入っていた。
だから、夏の終りを思う時、蒼空の胸はチクチク痛んだ。


