スーパーは空いていた。
乃々と母親は入り口の脇に積んであるカゴを取って歩いた。
明るい店内の大きな棚に隙間なく商品が並んで、その間を人が何人かゆっくりと歩いていく。
乃々はカートを押している母親の後ろを歩きながら、商品を興味深く眺めた。
「別荘生活も酣ね。」
缶詰のコーナーでトマトの缶を取りながら、母親が言った。
「乃々食べたい物言いなさい。買っていくから。蒼空くんは肉、って言ってたわよ。」
乃々は棚の下の段に積み上げられた魚の缶詰を見ていた。
サラダに合う物が欲しいのだが、どれが合う魚なのか分からない。
「ピザは買った……と。」
母親は同じ中身の違う会社の缶詰を見比べた後、しゃがんで缶詰をいじっている乃々を横目で見て言った。
「蒼空くんとは大分仲良くなったんじゃない?。夏休みにお友達ができるって良いことね。」
ツナの缶詰を取って頷いた乃々から、母親は缶詰を取り上げた。
「学校のお友達とはまた別でしょう。こまめに連絡し合えると良いんだけど。」
頷いた乃々に母親が次に言ったのは思いもしない事だった。
「どうせなら家で食べないような物にしなさい。……明日、もう一人男の子が来るわよ」
カートの中の丸い缶詰が、カゴの端に転がって行った。


