乃々と貸し別荘の話







 車はのんびり山道を下った。 


 フロントガラスに匂いのするチャームがくっつけられていたが、運転がうまいので、少しも揺れなかった。


「何描いてたの?」


 運転をしながら、母親が聞いた。


「蒼空くん」


 乃々は答えながら、持たされた母親の鞄を膝の上から脇にずらした。


 車の窓を少しだけ開けると、町中へ出るまで外は緑の木々がずっと連なっていて、坂を下ってくる間乃々は黙ったまま映画の田舎道の感じを思った。




 ────蒼空くんも一緒に来れば良かった。




 乃々は、明るい店の駐車場に降りながら、蒼空や別荘の事を思った。