乃々と貸し別荘の話







 乃々が、でたらめに歩き回っていると、ふいに、こっちへ走ってくる素早い足音が聞こえた。



「こら!」



 急に蒼空の姿が近付いて来たと思ったら、頭にゴツンと一発入れられて、乃々は痛っと呻いた。


 目を開けるとしかめっ面をした蒼空が自分を見下ろしていた。




「探し回った。何やってたんだよ。」

「キーホルダーなくして、探してたんだけど、なくて」

「入口に戻ればいいだろ。一人でうろうろして。何考えてんだよ。」

「戻ろうとしたんだけど戻れなかったんだよ」

「道をちゃんと見てないからだろ。ったく馬鹿なんだから。」

「見てたよ……」

「嘘付くな。見てなかったの、迷子になるんだから。」




 蒼空はまだべそをかいている乃々の手を取った。



「泣き虫。ったくもう。」



 蒼空が言った。



「僕の側から離れるな。帰るぞ。」



 一面のひまわり畑を、手を引いて歩いていく蒼空に、乃々は、引っ張られながら、まだ、迷子になったさっきの事を思っていた。