一階の大展示場を見下ろせる、明るい2階のロビーまで来ると、透明な手摺に寄りかかって、蒼空が口を開いた。
「動物の展示って、こんなんばっか。」
乃々が返事をする前にふんと鼻を鳴らした。
「まあ、教育的趣味ではあるな。」
蒼空は、さっきロビーの自販機で買ったお茶の蓋を開けると、口をつけた。
「帰りが別でも帰れる様に、タクシー代貰った。」
「迎え来るよ」
「先帰りたかった場合。」
ボトルを鞄に仕舞うと、蒼空は向き直って手摺に腕をかけ、下を見下ろした。
隣から見ると、蒼空のその仕草は、なんだか大人の様に見えた。
乃々も、真似をして手摺に腕を掛け、同じ様に下を見た。
入口から近い階下の大展示場にはお客さんが多く、大勢の人が出たり入ったりしている。
ガラス張りの壁からはさっき通ってきた芝生の公園が見えて、その向こうは駐車場で車が停まっていた。
「こういう人混みで僕からはぐれたら、親が探しに来るまでお前は帰れないね。そうなったらどうする?。」
乃々は、男の子にこの手の意地悪を言われた時になる、難しい表情をした。
「僕に感謝しな。お前がはぐれない様に、見張っててやれる。」
蒼空は、手摺から腕を離すと、行くよ、と声をかけた。
歩き出そうとした乃々は、後ろから手首をぐい、と掴まれた。
「……そっちじゃない。こっちだよ。」
蒼空は乃々の手首を掴んだまま歩き出した。


